図3は当該2種の溶体化処理材から得られた応力-ひず 図2 Mg-Y-Zn系(a)ならびにMg-Li-Y-Zn系(b)合⾦の ――1図2は,Mg97.9Y1.4Zn0.7((a) Li無添加)とMg87.9Li10Y1.4Zn0.7((b) Li添加系)の2種類のMg合金に対し 520℃で1時間の溶体化処理を施した試料のSEM写真である.Li添加の有無にかかわらず,互いによく似た二相組織が形成されていた.暗いコントラストの部分がHCP構造の-Mg固溶体母相であり,明るい部分が溶質原子YとZnに富むLPSO相である.なお,Li添加合金に固溶するLiに関わる定性・定量的情報についてはその評価が技術的に困難であり,今回実施した一連の実験においては調査対象外とした. 上述の溶体化処理材に対して,恒温槽を備えた万能試験機(Instron5985)を用いて,大気中にて試験温度を室温から最高400℃までの範囲で一定に保ち,圧縮試験を行った.このとき,直方体形状の試験片の最長辺方向(RD方向)に沿ってひずみ速度0.001/sの下で荷重を加えながら,最大で8 %程度のひずみが試験片に導入されるまで圧縮試験を行った.変形試料の組織・構造学的評価には走査型電子顕微鏡(SEM; JEOL JSM-7800F),走査型透過電子顕微鏡(TEM/HAADF-STEM; JEOL JEM-2100F) を利用した. 3.実験結果 3・1 試料の概要 み曲線で,横軸は公称応力で縦軸は公称ひずみを表す. 図3 Mg-Y-Zn系(a)ならびにMg-Li-Y-Zn系(b)合⾦の 溶体化処理材の組織を捉えたSEM像 溶体化処理材に対する圧縮試験の結果から得られた応⼒−ひずみ曲線 図4 Mg-Li-Y-Zn合⾦の200℃圧縮材の-Mg⺟相に⽣じた転位組織を捉えたTEM/STEM像:(a) TEM/SAD像;(b) BF-STEM像; (c) HAADF-STEM像 参考データとして, 純Mgの結果(a)も掲載した.いずれの試料にも共通する特徴として,試験温度の高まりとともに変形応力が低下するのは必然であるが,YとZnを複合添加した場合では,高い水準の変形応力を維持しながら加工硬化が続く様子が確認できる.また,Li無添加とLi添加合金の結果を比較すると,10 at.%程度のLiを添加してもLi無添加合金とほぼ同レベルの強度を維持していることから,YとZnの複合添加によってLi固溶によって生ずる強度低下を補って余りあるほど,大きな固溶強化を生み出していると判断できる.また,Li添加合金の変形初期段階の曲線の傾きが小さいことは,Li添加による延性能の向上を示唆するものと考えられる. 高温圧縮試験片に対して,TEM/STEMを利用して変形組織の評価を実施した結果,200℃以下の試験温度下で導入された転位組織は,溶質偏析を伴わない通常のショックレー型の拡張転位であることが分かった.図4は,Li添加合金の200℃圧縮材の-Mg母相に生じた典型的な転位組織を異なる結像モードで,[210]方位から撮影した写真で,(a)がTEM像,(b)がBF-STEM像,(c)がHAADF-STEM像である.このTEM像やBF-STEM像において,c軸方向に対して垂直に伸びる線状コントラストは底面すべりの分解によって生じた拡張転位である.これらをHAADF-STEMで観察すると,わずかに弱い回折起因のコントラストの発生は識別されるが,Zコントラストは明瞭には認めらず,溶質偏析は伴っていないと判断された.これに対して,図5は300℃圧縮材から得られた撮影結果である.200℃圧縮材の例と比べて拡張転位の密度は増加し,ほとんど全ての拡張転位に沿ってZコントラストがはっきりと識別できるようになった.その後の詳細な調査によれば,試験温度を250℃以上に高めると,溶質偏析を伴った − 92 −
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