1.研究の目的と背景キーワード:型レス,インクリメント成形技術,厚板,低荷重従来の型レスインクリメントシートフォーミング(Incremental Sheet Forming: ISFと略す)は,FFiigg..11(左)に示す薄板シート材を対象にして,棒状の成形ツールを三次元空間で移動させ,目標形状を成形する加工法である[1].成形経路を制御するため,CNCマシンやロボットアームを用いる.プレス加工法と比較して,ISF 加工法は,金型が不要なので,金型の開発期間と製作費用が節約され,コストダウンの効果が大きい.一方,型レスISF 加工法は,成形時間が長いため,大量生産よりも少量生産または単品の注文生産に適する.また,材料のインクリメント成形限界は,材料のプレス成形限界より大幅に増加する.従来のISF 加工法は,摩擦により成形ツールへ横荷重がかかるため,被成形材の板厚が厚い場合に,ツールの剛性と強度の制約により適用が困難となる.現状では,厚板を輸送機器,圧力容器などの曲面形状に加工するため,厚板表面の加熱による曲げ加工法[2],または,マルチポイントプレートフォーミング(MPF)の加工技術が利用されている[3〜5].本提案では,成形ツールに大きな横荷重がかからない厚板インクリメント成形法(die-less single-tool multi-point plate forming: DS-MPFと略す)の研究開発を行う.DS-MPF成形法のイメージが,FFiigg..11(右)に示されるように,厚板を平面内で移動させながら,上下方向で移動する成形ツールと厚板の接触により成形する方法である.成形ツールが下方へ移動する時に成形を行い,上方へ移動する時に厚板を平面内で移動させることで,成形ツールに横荷重がほぼかからないことを実現する.このように,被加工厚板を平行移動させながら成形ツールの繰り返し上下移動により複雑な三次元形状を徐々に加工することが可能と考えている.具体的には,成形ツールの上下移動をサーボプレス機で制御し,被加工厚板の平面内の移動をCNC マシンで制御する.(2018年度一般研究開発助成AF-2018010-B2)大阪大学接合科学研究所教授麻寧緒2.研究内容と研究手法3.DS-MPF試験方案の設計本研究内容の概略をFFiigg..22に示す.研究手法としては,数値解析と実験検証をそれぞれ用いた.具体的な研究の流れは,①DS-MPF加工方案の設計,②加工方案の数値解析,③加工方案の実験検証,④加工方案の分析,⑤DS-MPFの実用化提案からなる.まず,数値解析を先行してDS-MPF加工法のフィジビリティを明らかにし,次に実験検証を実施し,最後に実用化の提案を行う.FFiigg..33には設計したDS-MPF試験方案を示す.ツールヘッドは,X,YとZの3方向での移動が可能である.マイナスZ方向は加工方向である.成形ツールを加工位置までに移動させる非加工移動は,プラスZ方向やXとYの方向での変位で設定される.ツールが加工位置に到達した後,マイナスZ方向へ移動させ,板材を押し曲げする.ツールは,横方向の力を受けず,押し曲げにより厚板を三次元曲面形状に成形する.ツールがプラスZ方向に上がると,押し曲げた板材にスプリングバックが発生する.このような押し曲げを予めに設定したマルチポイントで行い,設計した形状になるまで繰り返す.厚板を曲げ加工するため,面内ひずみを減らす簡単支持の境界条件が望まれる.簡単支持の境界条件下で,曲げひずみが最大となり,面内ひずみを極力小さくすることができる.結果として,三次元曲面形状に加工するために必要な成形荷重が小さくなり,板厚減少も抑制することができる.Fig.1Concept of ISFand DS-MPF.Fig.2 Research contents and sequence.Fig. 3 Schematic diagrams of DS-MPF.− 85 −型レス厚板インクリメント成形技術の研究開発
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