助成研究成果報告書Vol.34
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キーワード:張出し加工性,エリクセン試験,初等解析 2.実験方法 2・1 供試材 1.研究の目的と背景 薄板のプレス加工における加工性の指標の一つに張出性があり、張出し性を評価する最も一般的な手法はエリクセン試験1)である。エリクセン試験とは、ダイスとしわ押さえの間に締め付けた板状試験片に対して、球状の端部を持ったパンチを押し込み、板厚を貫通する割れが発生するまで押し込んだ時のパンチの移動距離をエリクセン値として薄板の張出し性を評価する方法である。 日本産業規格(JIS)では、板幅が90 mm以上の比較的大きな寸法の板状試験片を用いて、直径20 mmの球形パンチによりエリクセン試験を行うことを標準としているが、板幅の小さい試験片であっても、パンチ直径や試験片板厚を小さくすることで試験は実施可能である。しかしながら、異なる直径のパンチまたは異なる板厚の試験片を用いて得られるエリクセン値は、標準試験片を用いて得られるエリクセン値とは当然異なるため2,3)、条件の異なる試験により得られたエリクセン値を直接比較できないという問題点があった。 本研究は、異なるパンチ直径および試験片板厚を用いて得られるエリクセン値を一義的に評価する手法の確立を目指して立案されたものである。プレス加工用低炭素鋼板に対して、パンチ直径および試験片板厚を種々変化させ図1 エリクセン試験装置の(a)外観写真および(b)全体構成図. 弘前大学 大学院理工学研究科 (2018年度 一般研究開発助成 AF-2018008-B2) 准教授 紙川 尚也 た条件でエリクセン試験を行い、得られた荷重・変位曲線を定量的に解析することにより、エリクセン試験によって評価されるエリクセン値の物理的意味を理解することを試みたので、その結果を報告する。 本研究では、代表的な実用プレス成形用軟鋼板であるSPCE薄板材を用いて実験を行った。板厚(t0)が 1 mm、 0.8 mm、 0.6 mm、0.5 mmのSPCE鋼板を実験に供した。いずれの場合も、フェライト単相の完全再結晶組織を有する冷間圧延・焼鈍材であり、平均結晶粒径は約20 μmであった。 2・2 エリクセン試験 2・2・1 試験装置 万能試験機に設置可能なエリクセン試験装置を作製し、実験に用いた。図1にエリクセン試験装置の外観写真と構成図を示す。装置は、パンチ(punch)、ダイス(die)、しわ押さえ(blank holder)、4本のコイルばね(coil spring)と他の支持部品から成る。この装置では、板状試験片はダイスとしわ押さえの間に挿入され、4本のコイルばねはばね押さえ(spring holder)と天板(top plate)の間に挿− 80 −エリクセン試験により得られる荷重・変位曲線の定量解析

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