助成研究成果報告書Vol.34
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キーワード:強ひずみ加工,集合組織,成形性,リジング 1.研究の目的と背景 高エネルギー加速研究機構(KEK)が主体となる次世代型直線衝突加速器「国際リニアコライダー(ILC)」計画では数万個が連結された高純度ニオブ製の超伝導加速空洞が使用される[1].この超伝導ニオブ空洞はこれまで板からプレス加工により椀状の半セルに成形して,向かい合わせた1組の半セルを電子ビーム溶接(ERW)により単一セルを作製して,さらに連結させていく製造が検討されている.しかし,この方法では生産性の低さと莫大な製造コストが課題となっている.そこで,長尺のニオブ管から液圧成形により多数のセル連結体を一機に製造する方法が検討されている.[1] 一方,フェライト系ステンレス鋼は耐食性や耐熱性,加工性に優れ,オーステナイト系に比べると安価であり,Niを使用しない省資源に寄与する材料であるため,自動車の排気ガス用鋼管や工場等の配管用のベローズ型継ぎ手管などに多く用いられている.従来の製法ではプレス成形や曲げ加工,溶接など多くの工程を要するので省エネルギーおよび製造コストの観点から,単一工程で複雑な形状への成形が可能な液圧成形への需要が高まっている.それに伴って.加工難度の高い形状への成形や,素材の成形性不足の問題がある.その中には組織の不均一性が原因と考えられる成形性不足によって加工中に破断する事例がある. ニオブと上記のフェライト系ステンレス鋼に共通するのは共に変態点をもたないBCC金属であり,不均一組織が残留しやすく,これが原因と考えられる成形性不足が問題となる. 特にフェライト系ステンレス鋼はリジングと呼ばれる成形時に生じる圧延方向のしわ状の欠陥が問題となる場合が多い.[2]組織の不均一性はコロニーと呼ばれる類似の結晶方位を有する結晶粒群が存在し,その塑性変形挙動の差に基づいて発生するものと考えられている.[3]コロニーが形成される原因としては,変態点を持たないこと,BCC構造であるので,加工後の回復(連続動的再結晶)が早く,交差すべりにより転位密度が低いために,その後の熱処理により再結晶が起こりにくくなるためである.[4]これにより,加工時にリジングが生じ,成形性が劣ることが問題となっている.さらにニオブは高融点でありながらヤング率が鉄の半分であるため,加工硬化性が低いため成形性が低いことが予想される.[5] 近年,強ひずみ加工によりせん断帯を導入することで再結晶を促進してリジングの低減に効果があることが報告されている.[6] 実際にSPD法の一つであるECAP法同志社大学 機械システム工学科 (2018年度 一般研究開発助成 AF-2018007-B2) 教授 宮本 博之 により,フェライト系ステンレス鋼の熱延板を1パスのみ加工して,加工組織に再結晶の駆動力となるせん断帯(シアーバンド)を高密度に導入して,その後の冷間圧延と熱処理を加えることにより,集合組織を制御して,板の成形性の指標であるr値とリジング性が改善できた報告がある. [6, 7]一方,Tube channel pressing (TCP)法と呼ばれるECAP法を管材用に適用した手法が発明され,金属管に対する結晶粒超微細化の効果が報告されている.[8] そこで,本研究ではニオブおよびフェライト系ステンレス鋼409Lの管材にTCP法を適用して集合組織を制御することでリジングを軽減させ,成形性を向上させることを目的とした.なお,著者らが知る限り,管材の集合組織に着目して,加工プロセスによりその集合組織を制御させ,管材の成形性を高める試みは例がない. 2.実験方法 純度ニオブおよび10%Crフェライト系ステンレス鋼SUS409の溶接管を使用した.管の寸法は外径42.7 mm,肉厚1.0 mm,長さ25 mmである.TCP法の模式図と本研究で使用した金型の外観写真を図図11に示す.TCP法とは,管状の経路を有する金型に管を挿入して,経路中央部の屈曲部においてせん断変形を加えることにより金属組織を微細化する加工法であり,側方押出またはECAP法を管に適用した加工法である.[8] TCP加工を最大3パスまで加えた,押し出し速度2 mm/min, 金型を423 Kまで加熱して行った.その後,再結晶させるために焼きなましを行った.ビッカース硬さ試験,引張試験,組織観察,XRD解析,EBSDによる結晶方位解析を行った.硬さ試験は島津社製マイクロビッカース硬さ試験機(HMV-1:島津微小硬度計)を用いて硬さ試験を行った.荷重980.7 mN,荷重保持時間15 sとし,10回測定し,平均値を試験片のビッカース硬さとした.TCP1パス材,2パス材を熱処理したものに対してそれぞれ引張試験を行った.引張試験機として島津製作所製Autograph AGS-10kNDを用いて,初期ひずみ速度で試験を行った.引張試験片は2-2で示したものを用いた. 15%の伸びひずみを与えた後r値を算出した.組織観察は⽇本電⼦製:JSM-7001FD型FE-SEMおよびOxford Instruments社製の 電⼦線後⽅散乱回折(EBSD)法により結晶⽅位分布測定を⾏った. 成形性の評価はステンレス鋼についてのみ液圧バルジ試験により実施した. − 75 −強せん断変形によるニオブ管の集合組織改善と高成形性化

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