2.2 材料試験 2 のODF. 図 1 1.緒 言 (2018年度 一般研究開発助成 AF-2018006-B2) た後に単純せん断を負荷する交差負荷試験を実施する.これらの試験より,バウシンガ効果,交差効果といった加工硬化挙動を測定する.その後,結晶塑性モデルを用いて数値解析を実施する.転位蓄積によるすべり系の背応力を考慮することでバウシンガ効果の再現を試みる.すべり抵抗の発展に対する潜在硬化の寄与を強めることで交差効果の予測を試みる.本研究では,個々の転位を直接考慮することはせずに,背応力および潜在硬化係数を媒介変数として転位の発達が塑性挙動に与える影響を再現する.このような背応力と潜在硬化がさまざまな負荷状態に対する異方性に与える影響を明らかにする. 2.実験方法 2.1 材料 供試材は板厚1 mmのA5052-O板である.X線回折によって集合組織を測定した.板を40枚積層して,圧延方向(RD)と板厚方向(ND)からなる面の{111}, {200}, {220}, {311}面の極密度を測定した.Labotex(Labosoft社製)を用いて結晶方位分布関数(ODF)を解析した.図 1にEulerのODFを示す.Cube方位が主方位とな角が2る集合組織である. 本研究では,単軸引張,単純せん断,二軸引張を実施した.実験において,ひずみはデジタル画像相関法(Aramis v6.3, GOM社製)によって同定した.座標系はRDをx軸,圧延直角方向(TD)をy軸に一致させた. (1) 単軸引張試験 単軸試験片は平行部の長さ75 mm,幅12.5 mmとした.試験片中央部の長さ50 mm,幅12.5 mmの領域の対数ひキーワード:塑性異方性,結晶塑性解析 板成形シミュレーションの解析精度に塑性構成式は大きな影響を与える1), 2).板材がプレス成形中に受ける変形に近い変形モード下での力学特性を測定するために,二軸引張3)や反転負荷3)–5)などの実験技術が開発されてきた.それと同時に,様々な異方性降伏関数6), 7),ならびに加工硬化則8)–10)も提案されてきた.降伏関数を用いる巨視的な塑性構成則だけでなく,結晶塑性モデルに関する研究も進められている11)–14).結晶塑性モデルの利点は,集合組織に起因する異方性,およびその発達を数値解析に取り込めることである. 巨視的な塑性構成則と同様で,結晶塑性モデルにおいてすべり系の背応力を考慮することで,バウシンガ効果を再現することができる15).すべり系に堆積した転位もしくは転位セル壁からの反力が背応力の起源である.また,すべり抵抗の発展に対する自己硬化と潜在硬化の寄与率を変えることで交差効果を予測できる16).すべり系の転位が林立転位を切りながら運動する現象は,潜在硬化係数を自己硬化係数よりも強くして再現することが多い.低炭素鋼板に見られるような複雑なバウシンガ効果,交差効果を予測するために転位密度の発展を規定した高度なモデルも提案されている13)–14).ただし,アルミニウム合金板においては,バウシンガ効果や交差効果は,比較的に小さいことが多いと報告されている17). 結晶塑性モデルを塑性加工シミュレーションで活用する方法として,結晶塑性解析の結果を数値実験とみなし,それより巨視的塑性構成則の材料係数を決定する方法18)がある.または,結晶塑性モデルをそのまま成形シミュレーションに組み込む方法19)がある.どちらの方法であっても結晶塑性解析が塑性変形を正確に予測できていることが肝要である. 結晶塑性解析と実験結果を比較した研究は多数あるものの,負荷モードが限定されている場合がほとんどである11), 13), 14), 18), 19).板成形への活用を念頭に置くのであれば,さまざまな変形モードに対して実験結果と結晶塑性解析を比較し,結晶塑性モデルの有効性を検討すべきである. 本研究では,A5052-O板を対象として,単軸引張,二軸引張試験を実施する.これより単軸応力状態および二軸応力状態において発現する異方性を明らかにする.さらに,単純せん断による反転負荷試験,および単軸引張を負荷し静岡大学 機械工学科 准教授 吉田 健吾 45°,90°45°,90°− 69 −転位の発達を考慮した結晶塑性による 反転負荷・多軸負荷の弾塑性変形の予測
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