3. 温度の増加に伴って,摩擦係数が増加した.これは,塑性変形の局所化に伴いテーパー部入口で酸化膜がはく離しやすくなるためと推察される. 4. 温間加工では,酸化膜が厚い場合は薄い場合に比べ,凝着がより小さい.これは酸化膜が厚いと,母材の変形による亀裂が生じても,チタン新生面の出現による凝着が抑制されるためであると推察される. 質-Ti-6Al-4Vチタン合金製ねじ部品, (2007). 2. 温間鍛造では温度の増加に伴って,凝着がより生じやすくなる.これは,母材の変形に酸化膜が追随できず,酸化膜がはく離し,その結果凝着が生じたためと推察される. 本研究は,公益財団法人天田財団の一般研究助成(AF-2018005-B2)により実施した研究に基づいている.ここに記して深甚なる謝意を表します.また,本研究の遂行には,静岡大学客員教授 久保田義弘氏および静岡大学大学院生 西源貴氏の多大な協力があったことを付記し,感謝の意を表します. 連講論, (2020), 106-107. 謝 辞 参考文献 1) 日本ねじ研究協会: FRS 0701, 締結用部品の機械的性2) Nakamura, T., Bay, N., Zhang, Z. L.: J. Tribol., Trans. ASME, 119-3 (1997), 501-506. 3. 3) 五十川幸宏・土屋能成:塑性と加工,39-455 (1998),1207-1211. 4) Yoshida, Y. & Kanda, Y.: Proc.7th International Conference on Tribology in Manufacturing Processes (ICTMP), (2015), 200-207. 5) 森謙一郎: Materia Japan, 41-7 (2002), 467-472. 6) 河鰭実昌:トライボロジスト,48-10 (2003), 802-807. 7) 川並高雄,関口秀夫,斎藤正美,廣井轍麿,大賀喬一,小林政教,仲町英治,片岡征二,筒井佳子:基礎塑性加工学(第3版), (2015), 森北出版. 8) 小坂田宏造:精密工学会誌,58-6 (1992), 943-947. 9) 西源貴・久保田義弘・早川邦夫・中村保: 第71回塑加 10) 川鰭実昌:トライボロジスト,48-10 (2003), 802-807. 11) 福田正人・田部明芳・森口康夫: 昭57春塑加講論 (1982), 143-146. て,20 °Cでは表面積拡大率は約 -1.5%であるが,温度の増加に伴い表面積拡大率はより小さくなることがわかる.これは,図7からわかるように,温度の増加に伴い,母材の強度および加工硬化特性が小さくなり,テーパー部の成形に際して局所的な塑性変形が生じやすくなるためと考えられる. また,20 °Cでは凝着が生じなかったことから,表面積拡大率が -1.5%を下回ると酸化膜がはく離し,凝着が生じやすくなると考えられる.温度の増加に伴い,Spが小さい段階で表面積拡大率が -1.5%を下回っていることから,早期に酸化膜がはく離し,凝着が生じると推察される.凝着が生じると摩擦抵抗が増加するため,μdの増加を引き起こす. 次に,酸化膜厚の影響について検討する.事前の試験において,膜厚0.08, 0.10および0.12 µmで冷間成形を行った際には,µd,成形荷重および試験片の表面状態に違いは見られなかった.しかし,図12および13に示すように,温度が高い時には0.10 µmの方が凝着,µd ともに小さい.凝着により試験片の取り外しが困難となるような成形限界については,0.08 μmの場合は300 °C,0.10 µmでは600 °Cであり, 0.10 μmの方がより高い温度での成形限界となった.酸化膜の破壊によって µd が増加する11)ため,膜厚をより大きくすることで,酸化膜が破壊されにくくなり,凝着が抑制され,その結果チタン合金の温間加工における成形性の改善につながると推察される. 4.結 言 チタン合金の前方押出しによるテーパー面のトライボロジーの温度依存性に関し,冷間・温間RC型摩擦試験を行い,以下の結論を得た. 1. 大気酸化によるチタン酸化膜は,凝着を抑制し,摩擦を低く安定化させる効果がある.特に,超硬材料のダイスの場合,無潤滑で凝着を抑制することができた. − 68 −
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