1.緒言2.チタン合金の温間前方軸-後方缶押出し型摩擦試験法の開発キーワード:トライボロジー,チタン合金,凝着チタン製ボルトは,強度や耐食性など,様々な特性に優れており,機械構造物や医療用等の締結に使用されている.チタン製ボルトは,低・中強度の純チタンボルト,高強度(引張強さ825MPa以上)のα–β型チタン合金ボルト,β型チタン合金ボルト1)の3種類が存在する.生産実績が多いTi-6Al-4Vが代表的なα–β型チタン合金ボルトは,高い強度と高延性が必要とされ,組織の等軸微細粒化を狙い,α–β域温間多段鍛造工程によって成形されるが,その前方軸押出し工程で,凝着や焼付きが発生し,成形が困難となる場合が多い.本研究では,α–β型チタン合金ボルトの温間前方軸押出しのトライボ特性を評価するため,塑性変形の様式が同様な温間前方軸-後方缶押出し(以後RCと略称)型摩擦試験法を開発し,それを使用して,大気酸化によって酸化膜を形成させたα–β型チタン合金の前方押出し鍛造におけるトライボ特性の温度依存性に関する研究を行った.2.1ボルトの多段鍛造工程図1は,一般的なボルトの多段鍛造工程を示す.第1工程はねじ転造下径を成形するボルト軸部の前方軸押出し,第2工程はボルト頭部の予備据込み,第3工程は頭部ソケットを成形する後方せん孔である.α –β型チタン合金ボルトの温間多段鍛造においても同様な工程設計が行われるが,特に第1工程の前方軸押出しで凝着や焼付きが激しく,切削工程に置き換えられる場合が多い.α –β型チタン合金の温間の前方軸押出しを可能にするため,種々の鍛造条件でトライボ特性の評価が行える摩擦試験法の開発を行った.2.2前方軸-後方缶押出し型摩擦試験の原理図2は,中村らによるテーパーダイス面のトライボ特性を評価する前方軸-後方缶押出し型摩擦試験の概念図を示す2).パンチストロークSpと成形後の後方缶高さHuを実測し,有限要素法によって作成した較正線図に当てはめ,テーパーダイス面の摩擦係数を同定する.この試験法は,図1の第1工程のボルト軸前方押出しにおける塑性変形の様式と同様であるため,この試験法を基にα–β型チタン合金の温間鍛造に適用可能な試験法を開発した.2.3温間RC型摩擦試験用のダイス・パンチ・試験片図3は,本試験法における試験片寸法を示す.直径10 mm,高さ11 mmとし,実際のα–β型チタン合金ボルト静岡大学工学部機械工学科(2018年度一般研究開発助成AF-2018005-B2)教授早川邦夫の素材の直径との整合性を図った.これは,潤滑剤の評価は極力実加工に近い条件で行うことが望ましいとされているためである3).試験片端部には,あらかじめ10°の面取り部を設けた.これは,試験片端部のエッジ部がダイステーパー面に接触すると,局所的な凝着や焼付きが発生し,ダイステーパー面の摩擦を評価することが難しくなるためである.ダイス穴径の基本寸法を,試験片の温間鍛造の熱膨張を考慮し10.1mmとした.ダイスnibは,リングによって締め代0.6%の焼きばめされ,圧縮応力によってnibの割れを防止した.nib材は,RT53(超硬),HAP40(熱間鍛造用ハイス)およびSNP-03(窒化珪素)の3種類を使用した.試験片の素材として,ASTEM136(Ti-6Al-4V相当α –β型チタン合金)を使用し,大気酸化によって酸化膜を形成した.図2前方軸-後方缶押出し型(RC型)摩擦試験法図1 一般的なボルトの多段鍛造工程図3 試験片寸法Blank1st2nd3rd− 64 −前方軸-後方缶押出し鍛造によるチタン合金のトライボロジーの温度依存性の研究
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