助成研究成果報告書Vol.34
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キーワード:弾性率,チタン合金,オメガ変態 図1 光学式浮遊帯域溶融法。 図2 超音波共鳴法を用いた室温近傍での温度制御化にお1.研究の目的と背景 (2018年度 一般研究開発助成 AF-2018004-B2) て説明できる新規なω変態理論を構築する。これによって、塑性変形誘起ω変態が引き起こす弾性率増加抑止法を提示する。 2.実験方法 まず、アーク溶解法により、bcc安定化元素濃度であるV濃度の異なるTi-20V、Ti-21VおよびTi-27V (at.%) の母合金を作製した。次に、図1に示す光学的浮遊帯域溶融法を用いて、アルゴン雰囲気下において育成速度2.5 mm/hにてアーク溶解法によって作製した母合金の単結晶を育成した。育成した単結晶から、ラウエ法および放電加工機を用いて弾性率および内部摩擦測定、圧縮試験に必要な全ての面がbcc構造の{100}面で囲まれた直方体試料を切り出した。さらに、X線回折用の試料として底面がbcc構造の{111}面に平行なディスク状試料を切り出した。切り出した直方体試料およびディスク状試料に対して、bcc単相領域である1273 Kで1 hの溶体化処理を施し、氷水中に急冷した。 溶体化処理後(急冷後)のTi-21V合金およびTi-27V合金の単結晶試料に対して、直方体試料の固有振動数(共振周波数)から弾性率を決定する手法である図2に示す超音波共鳴法と電磁超音波共鳴法を組み合わせた手法を用いて室温近傍での時効に伴う単結晶の弾性率変化を測定した。 溶融部合金試料温度制御チャンバー試料圧電素子ける弾性率測定。 大阪大学 産業科学研究所 准教授 多根 正和 圧電素子我が国の高齢人口の増加に伴い、骨折や運動器疾患治療を迅速かつ有効に進めるための新規な骨折用プレートや人工股関節等の生体用インプラント(体内埋め込み型)材料の開発が要求されている。これらの生体用インプラント材料の開発において、金属材料の低弾性率化が強く求められている。これは、インプラント材料として生体骨(20~30 GPa)よりも高い弾性率を有する金属材料を用いた場合、生体骨との弾性率差により生体骨に十分な応力が加わらず、骨量の減少および骨質の劣化が生じるためである。そのため、bcc構造の不安定化(準安定化)によって低弾性率化を実現したbcc系チタン(Ti)合金を中心に、低弾性な生体用合金に対する研究開発が世界各国で実施されている。 生体用インプラント材料として近年注目されている準安定なbcc系Ti (チタン) 合金において、塑性変形、高温からの急冷等によって形成される六方晶構造のオメガ (ω) 相は、本来は避けるべき弾性率増加を引き起こすため、その形成メカニズムと弾性特性との相関関係に対する理解が、材料開発に不可欠である。最近、Taneら1)は低弾性率化のためにbcc構造の安定性を低下させた生体用Ti-Nb-Ta-Zr合金において、室温時効に伴ってω相の前駆構造であるとされているDiffuse ω構造が形成され、弾性率が増加するという特異現象が明らかにした。ここで、Ti-Nb-Ta-Zr合金において、室温時効下で構成元素の原子拡散は生じないと考えられる。そのため、室温時効に伴うDiffuse ω構造の形成 (室温時効に伴うω変態) およびそれに起因した弾性率増加は、無拡散で観測不可能なほど瞬時に変態が生じる従来の非熱的 (非等温) ω変態および溶質原子の拡散を伴って時々刻々と変態が生じる拡散型の熱的 (等温) ω変態のためのω変態理論2)を用いて説明することが不可能である。つまりω変態の支配メカニズムは未だ明らかになっておらず、塑性変形、高温からの急冷、室温での時効によって生じる無拡散のω変態をすべて一貫して説明できるω変態理論を構築することが必要である。このω変態理論の構築は、塑性変形誘起ω変態の制御において極めて重要であることから、塑性変形誘起ω変態が引き起こす弾性率増加抑止法の確立において不可欠である。 そこで、本研究では、これまでに発見した室温時効に伴うDiffuse ω構造の形成 (室温時効に伴うω変態) および弾性率の支配メカニズムを解明し、その上で室温時効に伴うとDiffuse ω構造の形成および力学特性変化と従来のω相変態に関する変態現象および弾性率変化を全て一貫し− 59 −生体用チタン合金において塑性変形誘起オメガ変態が引き起こす 弾性率増加抑止法の確立

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