助成研究成果報告書Vol.34
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3-13-29 4.結言 Arイオンビーム謝 辞 参考文献 滑な面を得て,断面をSEM観察した。加工過程の模式図を図9に示す。粒界三重線から遠い位置において断面観察を行った後,再び断面を研磨して,より粒界三重線に近い位置での観察を行うことを繰り返した。 断面観察方向 試験片Cu-4における断面SEM観察の例を図10に示す。 Σ9粒界に沿って空洞(ボイド)が高密度に形成している。この試験片について,粒界三重線からの距離と空洞形成密度の関係を図11に示す。 粒界三重線からの距離が大きいほど空洞密度が高くなっていることが明らかである。粒界三重線から遠ざかるほど粒界すべり量が大きくなることから,空洞は粒界すべり 図9 粒界損傷観察のための断面加工模式図 図10 Σ9粒界上に形成した空洞(試験片Cu-4) 図11 粒界三重線からの距離と空洞密度(試験片Cu-4) に伴って発生し,連結して粒界亀裂へと発達していくことが内部損傷の観察から明らかになった。これは,Cu三重結晶のクリープ後の試験片表面観察に基づいて推測した破壊過程と一致している。 <110>傾角Σ3,3,9粒界を有する純Cu,純AlおよびAl-0.1wt.%Cu合金三重結晶を育成し,切り出した試験片に対してクリープ試験を行った。高温粒界すべりおよびそれに起因する粒界亀裂について以下のような知見が得られた。 (1) 純CuにおいてはΣ9粒界にのみ粒界すべりが起こった。粒界三重線から離れた位置では粒界すべり量が大きくなり,試験片内部で粒界に沿った空洞形成をもたらした。これらの空洞が連結してΣ9粒界における亀裂へと発達した。 (2) 純CuにおいてΣ9粒界に形成した亀裂は,粒界三重線を通って,引張軸に垂直に近い位置にある平坦なΣ3粒界へと伝播した。ただし,純CuにおいてはΣ3粒界には粒界すべりが生じないため,最終的にはΣ3粒界面に沿って引きちぎれる延性的な破壊が生じた。 (3) 純CuにおいてΣ3粒界面が平坦ではなく凹凸がある場合,Σ9粒界に沿った亀裂はΣ3粒界には伝播せず,粒内で延性破壊した。 (4) 純AlおよびAl-0.1wt.%Cu合金三重結晶は大きく伸びて粒内で延性破壊した。Σ9粒界すべりによる粒界三重線における応力集中緩和は,{100}すべりによるfold形成よりも,Σ3粒界に沿った粒界すべりが主であると考えられる。 (5) 以上により,延性的なクリープ破壊を起こさせるには,積層欠陥エネルギーの高い材料(例えばAl合金)ではΣ3粒界の粒界すべりを促進することが重要である。一方,積層欠陥エネルギーの低い材料(例えばCu合金)では,Σ3粒界面が平坦ではなく,凹凸を示すように形態制御することが役立つ。 本研究のような,日の目を見ることが少ない基礎的な研究テーマに対して暖かいご支援をいただいた公益財団法人天田財団に心から感謝申し上げます。研究成果の一部は日本金属学会欧文誌にて発表しました。 1) T. Okada, H. Hisazawa, A. Iwasaki, S. Amimoto, J. Miyaji, M. Shisawa, T. Ueki: Materials Transactions, Vol. 60, No. 1 (2019), 86. 2) T. Okada, H. Hisazawa, A. Iwasaki, K. Kawaguchi, H. Morimoto, K. Nakao, T. Ueki, T. Tomita: Materials Transactions, Vol. 62, No. 2 (2021), 239. − 58 −

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