図5 試験片Cu-2の破断面SEM写真(Σ3-2粒界面)。図3のA5mmΣ9CrackΣ3-2T.A.Σ3-2foldT.J.Σ9T.A.T.J.Σ9Σ3-2Σ3-1T.A.Σ3-12 mm2 mm部粒界面を観察した。図中のF表面は図3の観察面側,B表面は裏面側であることを示す。 図6 試験片Cu-3(クリープ試験後) Σ9粒界に沿った破面(図4)は平坦であった。一方,Σ3-2粒界に沿った破面(図5)には延性破面に特有のディンプルが多数見られた。以上の結果から,Σ9粒界は大きな粒界すべりを起こし,粒界に沿ってすべり割れるような破壊が起こった後,割れは粒界三重線を通って,Σ3-2粒界側に伝播したことが推定された。ただし,Σ3-2粒界が全く粒界すべりを起こさず,粒界に沿って脆性的に破壊をするわけでもないので,破面にはディンプルが形成されたものと考えられる。 試験片Cu-1およびCu-2の最終破断形態の違いは,試験片Cu-2においては,Σ3-2粒界面が平面的であり引張軸に対してほぼ垂直に配置していたことが要因として考えられる。これに対して試験片Cu-1では,Σ3-2粒界が大きく屈曲しており,粒界面の凹凸のため粒界面に沿った破断に至らなかったと考えられる。すなわち,粒界の性格だけでなく,その幾何学的形状が破断に大きく影響していることが分かった。 試験片Cu-1,Cu-2の破壊形態から推測される破断の過程は,破断に至る前にクリープ試験を中断した試験片Cu-3の変形挙動によっても裏付けられる。図6にクリープ試験後の試験片Cu-3の外観写真を示す。Σ9粒界に沿って試験片を貫通する割れが生じていた。割れは粒界三重線を伝ってΣ3-2粒界に伝播し始めていたが,試験片の厚さ方向には貫通していなかった。すなわち,試験片の破断を引き起こすのはΣ9粒界に沿った粒界すべりであり,その先に連続しているΣ3粒界(本研究の三重結晶ではΣ3-2粒界)の引張方向に対する角度や平坦度が最終破断形態を決めることが,試験片Cu-3の観察結果からも明らかになった。 以上により,純CuのΣ3,3,9粒界三重線近傍のクリープ変形において,破壊の起点となるのはΣ9粒界であること,Σ3粒界は平坦ではなく凹凸が多い方が試験片全体の延性を引き出す可能性が示された。 同一方位をもつ純Al三重結晶試験片のクリープ破壊は純Cu三重結晶とは大きく異なっていた。破断後のSEM写真を図7に示す。 試験片は大きく伸びており,粒界三重線から6mm程度離れた,Σ3-1粒界を挟む2つの結晶粒を横断する位置で破断している。粒界三重線からは多数のfoldが形成しており,Σ9粒界のすべりによる応力集中を緩和している。これに加えて,高倍率SEM観察により,Σ3-2粒界に沿ってΣ9粒界の3分の1程度の大きさの粒界すべりが認められた2)。粒界三重線からのfold形成およびΣ3粒界の粒界すべりは,Cuに比べてAlが延性的にクリープ破壊する主要因であると考えられる。 Al-0.1wt.%Cu合金三重結晶のクリープ破断後のSEM写真を図8に示す。 純Al試験片と同様に大きく伸びて1つの粒内で破断した。また,foldの形成は認められなかった。Alの高温変形においては,通常の{111}面に加えて{100}面においてもすべりが起こることがあり,Σ3,3,9三重結晶の場合,この{100}面のすべりがfold形成をもたらしている。0.1wt.%Cuという微量の元素添加によりfold形成が見られなくなる結果は,{100}すべりがAlの純度に強く影響されることを示している。ただし,fold形成が無いAl-0.1wt.%Cu試験片も延性的に破壊したことから,Σ9粒界の粒界すべりによる粒界三重線での応力集中を緩和する主たる機構は,Σ3粒界での粒界すべりである可能性が高いことが分かった。 3・2 試験片内部における粒界損傷 試験片内部での粒界の損傷を評価するために,破断に至る前にクリープ試験を中断した試験片Cu-4の平行部を切断し,アルゴン(Ar)イオンミリングを行うことにより平図8 破断後のAl-0.1wt.%Cu合金試験片(SEM写真) − 57 −図7 破断後の純Al試験片(SEM写真)
元のページ ../index.html#59