キーワード:高力黄銅,巨大ひずみ加工,結晶粒超微細化 謝 辞 参考文献 Manufacturing of Advanced Materials (THERMEC’2021)は,2021年6月1日-6月5日の日程でオンライン開催された.当初はTHERMEC’2020として,2020年5月31日-6月5日の日程でオーストリアのウィーンで開催予定であったが,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行のために延期され,さらにオンライン開催となった. 2.国際会議報告 著者は,Ultra-Fine Grained Materials(超微細結晶粒材料)のセッションにおいて,“Severe Plastic Deformation of Copper, Binary Cu-Zn Solid-Solution Alloys, and High-Strength Brass by High-Pressure Torsion”と題する招待講演を行った.本講演内容は,THERMEC’2021のプロシーディングに掲載されているので,詳細は参考文献1)を参照されたい.また指導大学院生と共同研究者による発表も行われ,合わせて3件の発表を行った.以下に著者による招待講演の概要を報告する. 巨大ひずみ加工(Severe Plastic Deformation: SPD)はバルクの試料が得られる結晶粒微細化方法の1つであるが,この方法は巨大なひずみを材料に与えることにより加工組織を超微細結晶粒組織へと発達させていくプロセスである.そのため超微細結晶粒組織がある程度まで形成されるとSPD加工時に動的回復または動的再結晶が起こるようになり,結晶粒はそれ以下には微細化されなくなる.SPDによって得られるCuの平均結晶粒径は200-400 nm程度であり,その強度は450 MPa程度である.CuのSPD材の更なる高強度化のためには,ZnやSi等の固溶原子を添加することで積層欠陥エネルギーを減少させることが有効であるが,積層欠陥エネルギーは固溶限近傍で最小値に漸近するため,多くのCu固溶体合金のSPD材では固溶限近傍で強度が飽和する2).例えば,Cu-30mass%Zn合金のSPD材の室温での引張強さは800 MPa程度であり,またCu-2mass%Si合金のSPD材の室温での引張強さは980 MPa程度である3). ところで,高力黄銅はZnを主たる合金元素とし,その他AlやFeなどの合金元素からなるCu合金であり,α相(fcc)とβ相(bcc)等からなり,それら相の含有率によって強度を制御し,鋳造材で430-750 MPa程度の高強度1.開催日時および開催場所 The 11th International Conference on Processing and 金沢大学 理工研究域 機械工学系 (2019年度 国際会議等参加助成(若手研究者枠) AF-2019084-Y2) 助教 國峯 崇裕 を有する.そこで本研究発表では,SPDによるCu合金のさらなる高強度化のために,種々のα相とβ相の含有率から成る高力黄銅にSPD加工を施し,それらの力学特性を調べた結果について報告した. 供試材として,純度99.99mass%のCu(4N-Cu),固溶体合金であるCu-10mass%Zn(Cu10Zn),Cu-20mass%Zn(Cu20Zn),Cu-30mass%Zn(Cu30Zn),そして高力黄銅であるCAC301,及びCAC304を用いた.これら合金の比較の際には,見かけの亜鉛含有量Xを用いた1).これら試料に均質化のための熱処理を施した後,6 GPa,0.2 rpm,室温の条件でSPD加工の一種である高圧ねじり加工(High-Pressure Torsion: HPT)を種々の回転数まで行った.X線回折により種々の試料の相の同定を行い,また電子顕微鏡による微細組織観察を行った.それらの試料に対してビッカース微小硬さ試験による硬度の評価を,また77 Kと室温における引張試験を行い,力学特性を調べた. X線回折により,HPT加工後のCAC301ではα相とβ相,CAC304ではβ相が確認された.CAC304にHPTを20回転まで施すことで,最高で420 HVまで硬度は上昇した.見かけの亜鉛含有量Xの変化に伴うHPT加工材の最高硬さの変化をプロットしたところ,固溶体からα相とβ相の2相からなるCAC301までは硬度は緩やかに上昇したが,CAC301からβ相からなるCAC304にかけて硬度は顕著に上昇した.引張試験の結果,CAC304のHPT加工材の引張強さは室温で1110 MPaを示し,また低温変形ではbcc構造で見られる低温脆性破壊をすることも無く比較的良好な強度と延性を示した. THERMEC’2021での本研究発表は,公益財団法人天田財団2019年度国際会議等参加助成(若手研究者枠)(AF-2019084-Y2)の支援を得て実施された.ここに謝意を表する. 1) T.Kunimine:Mater.Sci.Forum., 1016 (2021), 780-785. 2) T. Kunimine and M. Watanabe:Mater. Trans., 60 (2019), 1484-1488. 3) T. Kunimine, Y. Tomaru, M. Watanabe and R. Monzen:Mater. Trans., 62 (2021), 479-483. − 323 − The 11th International Conference on Processing and Manufacturing of Advanced Materials (THERMEC’2021)
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