助成研究成果報告書Vol.34
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キーワード:生体用金属材料,耐食性,熱処理 2.開催方法 オンライン 3.国際会議報告 3.1 会議概要 THERMEC’2021 (International Conference on Processing & Manufacturing of Advanced Materials)は先端材料のプロセスと製造に関する国際会議である。第1回目は日本で開催され、今回が11回目となる。本会議は当初2020年5月にオーストリア・ウィーンにて開催される予定だったが、COVID-19の世界的流行の影響を受け、開催日程や開催方法をオンライン変更するなどして2021年6月に開催された。 1)M. Mori, K. Yamanaka, S. Sato, S. Tsubaki, K. Satoh, M. Kumagai, M. Imafuku, T. Shobu, A. Chiba, Acta Biomaterialia, 28 (2015) 215−224. 2)K. Yamanaka, M. Mori, I. Kartika, M. S. Anwar, K. Kuramoto, S. Sato, A. Chiba, Corrosion Science, 148 (2019) 178−187. 謝 辞 参考文献 ッパ各国および中国やインドなどのアジア各国の研究機関で働く研究者であり、各国のにおける最先端の研究動向を知ることができる。 3.2 発表概要 筆者は、“Effects of thermomechanical processing on the corrosion behavior of biomedical Co–Cr–Mo alloys”というタイトルで研究報告を行った。生体用Co–Cr–Mo合金は機械的特性や耐食性に優れることから人工股関節などとして整形外科分野で使用されているが、患者のQOLの観点から耐久性のさらなる向上が期待されている。本研究グループでは熱間加工による当該合金の組織制御について系統的な研究を行い、多パス加工により転位や積層欠陥を超高密度に導入可能であることを見出し、著しい高強度化を達成した1)。しかしながら、鉄鋼材料では格子欠陥の導入により耐食性が低下することが報告されており、生体材料として使用される本合金において耐食性に及ぼす格子欠陥の影響を明らかにすることは重要である。そこで、本研究では、多パス熱間加工により高強度化したCo–Cr–Mo合金の耐食性を調査し、格子欠陥の導入による耐食性の変化に1.開催時期 2021年6月1日〜5日 THERMEC’2021では、鉄鋼、生体材料、チタン合金、ハイエントロピー合金といった材料から、Additive Manufacturing、表面処理・コーティング、加工熱処理といったプロセスまで多岐にわたるテーマについて全部で30のセッションが設定され、34ヵ国から1500件の研究成果が報告された。本会議の主な参加者は、アメリカやヨーロ仙台高等専門学校 総合工学科 (2019年度 国際会議等参加助成 AF-2019074-X2) 准教授 森 真奈美 ついて検討した2)。 本研究ではASTM F1537規格を満たす生体用Co–Cr–Mo合金を用い、低ひずみ多パス熱間圧延を行った試料(熱間圧延材)と比較材として熱間圧延後に1150 ℃にて30分間熱処理した試料(熱処理材)を作製した。引張試験により求めた熱間圧延材の0.2%耐力、最大引張強度、破断伸びはそれぞれ1016 MPaと1491 MPa、39.5%であり、ASTM F1537規格を大きく上回る機械的特性が得られた。一方、電子顕微鏡による組織観察の結果、熱間圧延材と熱処理材の結晶粒径はそれぞれ約4 μm、約100 μmであった。また、X線回折ラインプロファイル解析により熱間圧延材の転位密度は約2 × 1014 m−2と見積もられ、焼鈍材よりも十分に高い値を有していることを確認した。これらの試料に対し、0.9%NaCl水溶液中にて動電位分極試験及びイオン溶出試験を行い、耐食性を評価した。その結果、イオン溶出試験では両試料の優位差は見られなかった。同様に、アノード分極曲線では腐食電位及び腐食電流密度に両試料の違いはほとんどなかったが、熱処理材において観察された活性態−不活性態遷移が熱間圧延材では消失し、不動態化臨界電流密度が減少した。以上は、不動態化が促進されることを示唆しており、熱間加工により機械的特性だけでなく耐食性も改善可能であることが明らかになった。 今回、発表はオンデマンドで配信されたため、研究者と直接議論することはできなかったが、発表時間の重複等がないため、より多くの研究成果を聴講することができた。オンライン方式での国際会議参加は初めてだったが、今後の研究遂行において参考となる意見やアイデアを得ることができただけでなく、関連する分野において最近の世界的な研究動向も知ることができた。今後、本会議で得られた情報を研究に生かしていきたい。 国際会議への参加にあたり、公益財団法人天田財団より助成を賜わりましたことを厚く御礼申し上げます。 − 319 −THERMEC’2021

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