助成研究成果報告書Vol.34
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キーワード:ハイエントロピー合金, 高強度化, 塑性変形 2.開催方法 オンライン 3.国際会議報告 3.1 会議概要 THERMEC’2021 (The 11th International Conference on Processing & Manufacturing of Advanced Materials)は先端材料のプロセスと製造に関する国際会議であり、世界各国の 3.2 発表概要 筆者は、“High Entropy Alloys”のセッションにて“Strengthening of transformation-induced plasticity-assisted high entropy alloy by adding interstitial nitrogen”と題して招待講演を行った。ハイエントロピー合金は一般に5種類以上の元素を等モル、あるいはそれに近い組成で含む多元系 1) Z. Li, K. G. Pradeep, Y. Deng, D. Raabe, C. C. Tasan, (2019年度 国際会議等参加助成 AF-2019072-X2) 謝 辞 参考文献 1.開催時期 2021年6月1~5日 THERMEC’2021では、鉄鋼、耐熱材料、生体材料、チタン、アルミ、マグネシウム、複合材料、燃料電池に用い東北大学 金属材料研究所 准教授 山中 謙太 研究者・技術者が上記テーマに関わる研究成果を発表する場として広く知られている。1988年に日本で第1回大会が行われて以降、オーストラリア、アメリカ、スペイン、カナダ、ドイツ、フランスで開催され、今回が11回目となる。本国際会議は当初、2020年5月31日~6月5日にオーストリア・ウィーンにて開催される予定であったが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により2020年11月に延期され、その後2021年6月に再度延期されてオンライン開催されることになった。 られる材料や水素貯蔵材料等の様々な材料を対象に、加工熱処理、コーティング、Additive Manufacturing等のプロセス、さらには中性子や放射光を用いた最先端の材料評価・構造解析、シミュレーションまで、多岐にわたるテーマをカバーする計30のセッションが設定された。 合金であり、特異な固溶体相の安定化や大きな固溶強化、低温における優れた破壊靭性など興味深い材料特性を示すことから国内外で精力的な研究が行われている。近年、塑性変形において加工誘起マルテンサイト変態に起因した変態誘起塑性(TRIP)を示す非当モル組成の準安定ハイエントロピー合金が提案され、優れた強度−延性バランスを示すことが報告されている1)。しかしながら、先行研究で開発された準安定ハイエントロピー合金の降伏応力は300 MPa程度であり、実用化にはさらなる高強度化が必要不可欠である。一方、筆者らは、生体用Co–Cr–Mo合金に関する研究においてN添加による力学特性の改善に取り組んできた2, 3)。本研究では、準安定なFCC相からなるCo20Cr20Fe34Mn20Ni6ハイエントロピー合金の力学特性と塑性変形挙動に及ぼすN添加の影響を調査した。 本研究では、高周波誘導溶解法、熱間鍛造・圧延・スウェージ加工により作製したN添加量の異なる合金を用いた。1100 °Cにて1時間焼鈍した後の組織はいずれもFCC単相であった。室温引張試験の結果、N添加材の降伏応力は無添加の場合と比べて100 MPa程度高く、添加量はわずかであるものの、侵入型元素であるNにより著しく高強度化することがわかった。一方、透過電子顕微鏡観察及びJ-PARCにて実施した引張変形中のその場中性子回折測定の結果より、N無添加材では塑性変形によりHCP構造のεマルテンサイトが形成することを確認した。この加工誘起マルテンサイト変態は塑性変形初期から起こり、破断時のεマルテンサイト分率は約60%であった。これに対し、N添加材ではFCC相が安定化され、加工誘起マルテンサイト変態が顕著に抑制された。さらに、中性子回折測定データに対してConvolutional Multiple Whole Profile (CMWP)法によるラインプロファイル解析を行い、N添加材はN無添加材よりも任意の引張ひずみにおいて転位密度が高く、大きな加工硬化を示すことを明らかにした。 最近では国内外を問わずオンライン開催が中心となっている。特にオンデマンド形式では時間の制約なく研究発表を聴講できる点にメリットがあり、本国際会議への参加を通して今後の研究に有益な多くの情報を得ることができた。一方、研究者と直接議論する機会や交流の場を持てなかった点は残念であった。 国際会議への参加にあたり、公益財団法人天田財団より助成を賜わりましたことを厚く御礼申し上げます。 Nature, 534 (2016) 227−230. − 316 −THERMEC’2021 (The 11th International Conference on Processing & Manufacturing of Advanced Materials)

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