助成研究成果報告書Vol.34
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図5aは、初期の膨潤度s0で規格化されたゲルの規格化膨潤度S(= s/s0)を縦軸、刺激作用時間を横軸に表す。365 nm光を照射させた場合、20 分にわたってゲル材料のSは1.1-1.2の値で一定であった。同様に、塩化水素溶液中35 oCに加熱した条件下であっても、ゲル材料のSは約1.0の値で一定であった。対照的に、は酸+光の二刺激を同時に作用させた場合は、10 分, 20 分にわたりゲル材料のSが1.8, 2.5に増大した。このような膨潤挙動は、二刺激作用下においてのみ、架橋密度が低下したことを示している。図5. (a) 刺激下におけるゲル材料の膨潤度変化(b) 刺激下におけるポリマーネットワークの質量変化(c) 逐次刺激・協働刺激におけるゲル材料の弾性率変化カル反応を伴うゲル化反応後においても、ポリマーネットワーク中で白金アセチリド錯体がその構造を保持していることが明らかとなった。続いて作製したゲルの刺激応答性を調べるため、酸もしくは光の単独刺激、または酸+光の二刺激を作用させ、その変化を調べた。ポリマーネットワーク材料の架橋点が切断された場合、ネットワーク網目サイズの増加に伴いゲル材料の膨潤度が上昇することが知られている。従って、評価は次式から算出される平衡膨潤度sを用いて行った。s = Ms/Md■■(Msは膨潤時の質量、Mdは乾燥時の質量を示す)ここで膨潤度測定と同じ刺激作用時間において、ゲル材料を完全に乾燥させることにより、そのポリマーネットワークの質量を測定した(図5b)。刺激作用前と作用後におけるポリマー質量のパーセント比としては、二刺激作用下の場合は、質量は59%に低下した。これは、架橋部位の切断によってポリマー鎖が流出したことによる。このような変化は、架橋点切断による高分子網目サイズの増加が生じていることを支持している。 ・■デュアルアクティベーションの二刺激協働効果と材料弾性率変化デュアルアクティベーションに伴うマクロ物性の評価を、Stress-strain曲線の測定によって行った。ゲルはマクロ物性として、ヤング率(E) = 55 ± 21 kPa、破断点歪み(ε) = 261 ± 63%、破断点応力(σ) = 70 ± 10 kPa、そしてタフネス(U) = 111 ± 26 kJ m-3の性質を有する。これに対して酸と光のデュアルアクティベーションを行ったところ、ゲルはε = 198 ± 30%を保持しながらも、E = 11 ± 1 kPa, σ = 14 ± 5 kPa そしてU = 15 ± 7 kJ m-3というそれぞれの物性値の統計的に有意な減少を示した。Eの減少に対応して、Mooney-rivlinプロットから調べた有効架橋密度は低下していたことから、この弾性率変化は架橋密度の減少に伴うものであることが実証された。ここで、二つの異なる刺激条件を同時に作用させるのではなく、一刺激ずつ順次行うことで、刺激が逐次的に作用しているか、協同的に作用しているかを評価した。その結果、逐次的な刺激(光→酸、および酸→光)に対しては、ゲルはは機械的特性を保持していることが明らかとなった(図5c)。従って本材料におけるデュアルアクティベーションは、光と酸の逐次的な作用ではなく、協働的な作用に基づくことが示された。このことは、本材料は光や酸の単独刺激に対して材料が化学的に変性せず、高い安定性を持つことを意味し、光安定性と光加工性という相反機能を実現する上で特筆すべき現象である。− 287 −(a)(b)(c)

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