3.実験結果と考察 図2に,レーザ照射のみ,攪拌のみ,LMSPの3通りで図2 異なる方法で加工した表面の観察結果 (攪拌時の工具挿入深さ: 30 μm, レーザのピーク出力: 800 W, パルス照射時間: 1.0 ms, パルス照射周波数: 30 Hz, 送り速度: 7.2 mm/s.) な摩擦熱を発生させる必要があるため,微細化が困難な場合がある.一方,LMSPの場合は,FSWのような工具径の制約がないのが特徴である. 図1(b)に,LMSPの実現可能性を検討するために試作した実験装置を示す.レーザ光源としてパルスYAGレーザ(ML-2150A; アマダウエルドテック社(旧アマダミヤチ社), 神奈川, 日本)を使用した.レーザ波長は1064 nm, 平均出力は25 Wである.ガウス分布の強度を有する.また,レーザヘッドと攪拌工具用スピンドルは,X-Z方向の2軸自動ステージのテーブルに一緒に取り付けてあり,照射位置と攪拌位置が変わらないように工夫してある. さらに,レーザヘッドは,2軸の手動精密ステージを解して,自動ステージに固定してある.加工物法線方向に対して45°傾斜した方向から,材料へレーザを照射する.手動ステージの位置を調節することで,スピット径と照射位置を任意に変更できる. 本報では,スポット径が2 mm,攪拌工具と照射中心位置とが0.5 mmとなるように位置を調整した. 攪拌工具には,右刃右ねじれの超硬エンドミル(直径1.0 mm, 刃長: 4 mm, 刃数: 4, ねじれ角: 30°)を使用した.右刃右ねじれのエンドミルをCW方向へ回転させると,切りくず(材料)は上方向へ排出される.本実験では,工具をCCW方向へ回転させることで,溶融した材料が攪拌中に溶融池から排出させるのを抑制した. FSWでは,工具回転数と送り速度の組み合わせによって,接合部の機械的特性が大きく変化する6).そのため,今LMSPでも送り速度と工具回転数は加工特性を支配する重要なパラメータであると予想できる.本報告では,LMSPの実現可能性を検討するため,工具回転数は2000 rpmに設定した. 接合する加工材料として,オーステナイト系ステンレス鋼SUS304の薄板(厚さ:100 µm)を使用した.薄板は,浮き上がりを防止するための固定ジグを用いて,X軸方向へ駆動可能な自動ステージ上に固定した. 実験では,まずLMSPの加工原理の検証を行った.1枚の薄板を実験装置に取り付け,①レーザ照射のみ(攪拌なし),② 攪拌のみ(レーザ照射なし) ③ LMSP(レーザ照射と攪拌)の3通りで材料表面を加工した.なお,攪拌時は,いずれも工具を約30 µm挿入した. 次に,レーザ照射条件が加工に及ぼす影響を検討するため,入熱量に大きな影響を及ぼすピーク出力とパルス周波数をそれぞれ3通りに変えて,LMSPによる加工実験をした.加熱位置での入熱量は,レーザ照射条件のほかにも送り速度の影響も受ける.そこで,加工条件を整理するために,オーバラップ率7)を定義した.オーバラップ率は,送り速度,ピーク出力,パルス周波数の関数となる.これが一定となるように,実験条件を変化させた. 最後に,LMSPによる接合を行い,レーザ溶接と比較しながら,接合強度を評価した.2枚のSUS304薄板を重ね合わせて接合を行い,万能試験機(MCT-1150; A&D社, 東京, 日本)を用いて,接合部のせん断強度を測定した. なお,本実験は全て大気中で実施しており,シールドガスは使用していない.また,レーザの出力変動や強度分布が,加工特性に影響を及ぼすと考えられる.これらは,実験や粒子法(SPH法)を用いた数値解析によって,今後検討する予定である. 加工したときの表面を観察した結果を示す.観察には,非接触粗さ測定器(µsurf; Nano focus社, Oberhausen, Germany)を用いた.図中の色スケールは,表面凹凸の高さを表している. 図2(a)に示す攪拌だけを行った場合を見ると,材料表面が工具で削られ,凹みが生じていることがわかる.また,工具をCCW方向へ回転させているため,切削はされず,工具による攪拌が生じている様子が確認できる.一方,図2(b)に示したレーザ照射のみを行った場合を見ると,大きく不均一な隆起が加工部に生じていることがわかる.これは,急激な加熱にともなって,金属蒸気が発生し,その影響によって溶融した材料が隆起・凝固したものと考えられる. − 282 −
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