助成研究成果報告書Vol.34
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キーワード:指向性エネルギー堆積法,傾斜機能材料,WC-Co超硬合金 は段階的に材料内部の組成や組織を変化させた傾斜機能材料2)の概念が大いに有効であり,実際,化学蒸着法や物理蒸着法で工具等に応用されている.しかしながらこれらの加工方法では,その実用上の適用範囲が現状では一部の部材に限られている. 近年,レーザ加工による粉体の積層造形に関する研究が盛んになっているが,この積層造形法により傾斜機能材料が作製可能になれば,金型や冶具などの必要な部分にのみコーティングを施すことも可能になり,実用上の製品への適用範囲は大いに広がるとともに,再利用によるコストの削減も見込めることから産業的にも大きな影響を与えることが予想される.しかしながらレーザ積層造形は高温溶融プロセスであり,また既存の基本単位造形層の厚さは100 μm程度以上であるため,基材とコーティング層との熱膨張係数の差により現状では積層造形後に多数の亀裂が生じてしまう3,4).また以下のようなWC粒子の均一分散に関するレーザ積層造形における特有の課題もある. レーザ積層造形で一般的に使用される金属粉末のサイズはφ10~150 μm程度であり,特に粉末床型のレーザ積層造形ではφ10~45 μm程度が5),また粉末供給機を使用するレーザ積層造形ではφ10~150 μm程度が使用される3,6,7).レーザ積層造形で金属基複合材料を積層造形しようとする場合,密度や粒子径の異なる金属とセラミックス粒子を同時に供給しながら,それらが均一分散された複合材料の微細組織を得ることは簡単ではない.まず図1(a)に示すように一層の厚みが例えば30 μmの時には,これより大きなセラミックス粒子は使用できない8).また微粒子や超微粒子,さらにはナノ粒子のセラミックスを使用したとしても金属との密度差のために図1(b)に示すような不均一な微細組織になってしまう.さらに粉末のサイズを微細にしていくと,粉末供給時に粉末同士の凝集や静電気による粉末の詰まり等のために粉末供給量の制御が難しくなるといった問題もある8). 1.研究の目的と背景 硬質なタングステンカーバイド(WC)粒子とその周りを囲むコバルト(Co)層で構成されるWC-Co超硬合金は,金型や切削工具などの耐摩擦摩耗特性が要求される部材に使用される1).耐摩擦摩耗特性と耐衝撃特性の構造的役割が求められるWC-Co超硬合金のような金属基複合材料における「硬度と靱性の両立」に関しては,連続的,また金沢大学 理工研究域 機械工学系 (2018年度 奨励研究助成(若手研究者) AF-2018237-C2) 助教 國峯 崇裕 図1 レーザ指向性エネルギー堆積法(Laser Directed Energy Deposition: LDED)で積層造形した金属基複合材料1層中におけるセラミックス粒子の分散状態を表した概念図8),(a)セラミックス粒子径が数十マイクロメートルの場合,(b)微粒子が不均一分散されている場合,(c)微粒子が均一分散されている場合. そこで本研究課題では,レーザ指向性エネルギー堆積法(Laser Directed Energy Deposition: LDED)とWC微粒子をCoボンド材で造粒焼結した造粒粉を用いて,図1(c)に示すような造形層厚さよりも微細なセラミックス微粒子が均一分散された金属基複合材料の造形層を得るための加工方法を検討した.微粒子均一分散微細組織制御法が確立できれば,より理想的な傾斜構造をLDEDで積層造形するための選択肢が増え,割れの無い積層造形層の実現に寄与する.なお,LDEDは別称ではレーザ粉体肉盛法(Laser Metal Deposition: LMD)とも呼ばれるが,国際標準化機構による用語定義を記載したISO 52900に倣い,ここではLDEDとした. 2.実験方法 2・1 供試材 積層造形用の基材として中炭素鋼(S45C)の板材(20 mm × 20 mm × 2.3 mm)を用いた.また積層造形用の粉末材料として平均粒子径10 μmのCo-Cr-W合金粉と,粒子径約1 μmのWC微粒子をCoボンド材で造粒焼結することで作製した平均粒子径30 μmのWC-12wt.%Co造粒粉を用いた.これら粉末の走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope: SEM)による二次電子像を図2(a)–(c)に示す8).図2(a)はCo-Cr-W合金粉であり,図2(b)は− 271 − 指向性エネルギー堆積法による金属基傾斜機能複合材料の コーティングと微粒子均一分散微細組織制御法の確立

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