助成研究成果報告書Vol.34
266/332

図7. アブレーション後の反応溶液の (a) UV-visスペクトル.(b) TEM画像. 300-400 nm 付近にブロードなピークが観測された.このピークは鉄含有錯体LMCT由来と考えられ,グルタチオン存在下でのレーザーアブレーションにより,グルタチオ 図8. (a) 2および (b) 3を含む水溶液中での液中レーザーアブレーション前後でのUV-visスペクトル変化. 図6. 本研究で用いた配位性有機物の分子構造. 図9. 3を含む水溶液中での液中レーザーアブレーションによる鉄錯体形成にかかるpH依存性. のアブレーションを検討した.3は鉄イオンへと配位可能な2つのカルボキシル基と1つのチオール基を有しており,どちらが (もしくは両方が) 配位に関与するかは脱プロトン化にかかるpHに大きく依存する.その結果,pKa 10.4,すなわち,ジカルボキシレートと,チオラートが1:1で生成する条件において,レーザーアブレーション後,400-600nm付近で吸光度の増大が見られた (図9).このUV吸収は,配位子である3から鉄イオンへのLMCTに由来するものと考えられ,鉄錯体の生成を示唆している.なお,いずれの場合もナノ粒子の生成は確認できなかった. ンと錯形成した何らかの錯体が得られたものと考えられる.また,これまでとは異なりヘマタイトナノ粒子の生成が抑制されていた (図7b).このことは配位性分子存在下では,鉄酸化物ナノ粒子の生成が抑制される事を表している.そこで,引き続きその他の分子存在下でも,空気下で液中レーザーアブレーションを行うことで,何らかの錯体生成が生じることを期待して実験を行った.なお,pHは,既知のpka値を元に,チオールを含む化合物2,3,7の場合,ジカルボキシレートもしくはカルボキシレートとチオラートが1:1で生成する条件,チオールを含まない化合物4, 5, 6, 8の場合は,カルボキシレート,もしくはジカルボキシレートが0.5当量存在する条件に設定した.その結果ジメルカプトこはく酸2,メルカプトこはく酸3水溶液でのみ,アブレーション後のUV-visスペクトルにおいて,グルタチオン存在下でのアブレーション結果と同様に,可視光領域に強い吸収のある化合物が生成した (図8).pH依存性についてより詳細な影響を明らかにするために,3を用い,同様のレーザー照射条件にて,種々のpH条件で 3・3 電気泳動によるアブレーション生成物の同定 ここまでで得られた鉄錯体は,混合物であると考えられ,それらの分離・同定をゲル濾過クロマトグラフィー (GPC) や電気泳動をはじめ,数々の手法をこころみたものの,分離が困難であった.そこで,化合物1~3存在下,40分間のレーザーアブレーションにより得られた水溶液をそのまま電子スピン共鳴 (ESR) スペクトル測定とESI-TOF-MSスペクトル測定に供することで,生成物の構造に関する知見を得る事を試みた.ESR測定の結果,いずれもg = 4.3のシグナルを与えたことから,今回得られた錯体が六配位鉄錯体で,非対称な配位環境を有していることが示唆された (図10,11). またESI-TOF-MS測定では,3を用いた場合m/z 624に − 264 −

元のページ  ../index.html#266

このブックを見る