図3. CTAB水溶液または有機溶媒中での液中レーザーアブレーションにより得られたナノ粒子のラマン分光スペクトル. 図5. アセトン中での液中レーザーアブレーションで得られた (a) コアシェル型ナノ粒子のSAEDパターン,(b) マイナー成分ナノ粒子のEDX分析結果. 図2. CTAB水溶液中での液中レーザーアブレーションにより得られたナノ粒子のTEM画像. 図4. (a) エタノール,(b) トルエン,(c) (d) アセトン中での液中レーザーアブレーションにより得られたナノ粒子のTEM画像. 次に,エタノール中でのレーザーアブレーションを行った.得られた反応溶液のTEM観察の結果,広いサイズ分布を持つコアシェル状のナノ粒子が生成していることが分かった (図4a).このような広いサイズ分布は,既に報告されている鉄をターゲットにした液中レーザーアブレーションでも観測されている9).また,トルエンを用いた場合には,アモルファスカーボンで覆われたナノ粒子が生成していることがわかった (図4b).このことは,レーザーアブレーション中,溶媒が分解し,さらにその分解物がナノ粒子表面上で凝集したことを示している.これらはともにラマン分光分析よりヘマタイトと良い一致をするスペクトルを与えた (図3). 一方,アセトンでレーザーアブレーションを行ったところ,他の溶媒系とは異なる結果が得られた.TEM測定では,二種類のナノ粒子が観測された.主生成物はエタノールやトルエンの場合と同様のコアシェル型ヘマタイトナノ粒子であったが (図4c),これに加え図中,矢印で示したように副生成物としてコアシェル型ではないナノ粒子も観測された (図4d).これらの混合物溶液についてラマン分光測定を行うと,そのスペクトルはヘマタイトナノ粒子のものと良い一致を示した.さらに主生成物であるコアシェル型ナノ粒子について,制限視野電子回折 (SAED) により観察したところ,マグネタイトFe3O4の (4 4 0), (4 0 0), (3 1 1) 面に由来する反射が観測された(図5a).しかし,ヘマタイト由来の反射は観測されなかったことから,コアシェル型のナノ粒子の組成は,コア部分がヘマタイト,シェル部分がマグネタイトであると考えられる.また,コアシェル型ではないナノ粒子についてTEM-EDX測定を行ったところ,鉄と硫黄のみが検出された (図5b). この生成機構については未だ詳細は明らかでないが,アセトンの配位性がこれらのナノ粒子生成と安定化に重要な役割を果たしていることが想定される. 3・2 配位性有機物存在下での液中レーザーアブレーション 上記の成果を元に配位性有機分子を共存させる事で,目的とするFe-Sクラスターやその前駆段階にあるナノ粒子の安定化を図る事を期待し,種々のアミノ酸やチオカルボン酸2~8や,含硫黄アミノ酸であるシステインを含むトリペプチドとしてグルタチオン1を水中に共存させた状態でのアブレーション実験を行った.図6に実験に用いた有機分子の構造を示した. まずグルタチオン1について濃度を0.1 M,pH 8.8として,レーザーパワーを0.3 mW,繰り返し周波数は10 Hzとし,窒素雰囲気下10分間照射を行った.得られた溶液についてUV-visスペクトルを測定すると,鉄硫黄クラスター錯体が吸収を持つとされる300-400 nm付近の吸収がほとんど観測されなかった (図7a)10).そこで,測定後UVセルのキャップを開けて空気中にさらしたところ, − 263 −
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