助成研究成果報告書Vol.34
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図8 金ナノ粒子凝集による初期粒子(8.1 nm)減少を考慮した消光スペクトルの算出結果 図8は,質量濃度4 wt%の場合の粒子径8.1 nmの金ナノ粒子の粒子数を想定した消光スペクトル計算結果を示している.Cysの添加によって粒子径8.1 nmの初期粒子の数が減少し,それに伴うスペクトル変化を算出している.凝集後の粒子径は200 nmと想定し,消光スペクトルに反映している.濃度0 mMとした場合の消光ディップ値から,計算された8.1 nmの粒子数は5.61×1014 個数/mLであった.金ナノ粒子の凝集による初期粒子数の減少により,波長520 nm近傍の消光ディップが減少した.光ファイバ型分光セルの容量を0.4 pLとすると,光ファイバ内の光と相互作用する金ナノ粒子の数は2.24×105個と推定された.その他の濃度については,実験結果の消光ディップ値から 1) K. Sugioka, Nanophotonics 6(2), 393 (2017). 2) R. Vilar, S.P. Sharma, A. Almeida, L.T. Cangueiro, and V. 3) A. Theodosiou, A. Ioannou, K. Kalli, J. Lightwave Technol. 4) Y. Wang, D. N. Wang, M. Yang, W. Hong, and P. Lu, Opt. 5) K. Goya, T. Itoh, A. Seki, and K. Watanabe, Sensor. Actuat. 6) K. Ai, Y. Liu, and L. Lu: J. Am. Chem. Soc. 131, 9496 (2009). 7) M. Shiraishi, K. Goya, M. Nishiyama, S. Kubodera, K. 8) M. Shiraishi, M. Nishiyama, K. Watanabe, S. Kubodera, 9) M. Shiraishi, K. Watanabe, S. Kubodera, Sensors 19, 2859 謝 辞 参考文献 考えられる.図7に520 nmの消光ディップに対するCysの濃度特性を示す.計測用小型分光器の光強度分解能を0.001とした場合,感度は0.008 mM-1と算出でき,Cysの測定分解能は0.125 mMを示した.金ナノ粒子と銅イオンを用いた比色法によるCysの感度は現在10 nM程度まで達成されていることから,今回の計測構成でも金属イオン適用などによる分解能向上が期待できる.また,以上の結果から波長520 nmの単色光源を使用し,金ナノ粒子凝集現象を光強度変化として取得できることが予想される.単色LED光源と光パワーメータの組み合わせによる,金ナノ粒子の凝集過程の経時変化を追跡できることが期待できる. 単位ミリリットルあたりの粒子数を推定したため,計算されたスペクトルは実験結果を再現している.数値計算では,凝集後の金ナノ粒子の直径を200 nmの代表値とした.Cysが5.0 mMの濃度に達すると,粒径8.1 nmのGNPは9.40×1013 個数/mLに減少し,200 nmの粒子数は3.10×1010 個数/mLに増加した.計算結果の5.0 mMの場合は,粒径200 nmの金ナノ粒子の増加によりディップ波長が長波長シフトしていることが確認された.図6に示した実験結果には,図8のような565 nmのディップが確認できなかった.これは,実際の実験では凝集後の金ナノ粒子の直径は,特定のサイズで固定されていないからである.不均一に凝集した粒子は特定の大きさを持たず,かつ数値計算で算出した程度の粒子数に達していないため,長波長シフトした消光ディップが確認できなかったといえる.つまり,520 nm近傍の消光スペクトルディップの減少は凝集を免れた初期粒子の粒子数の減少を反映しており,これを追跡することでCysの濃度を計測できることが明らかとなった.5.0 mMのCysを検出値とし,0.4 pLの検出量を想定した場合,ピコリットル分光セル内部のCysは2.0×10-15 mol(2.4×10-13 g)であった.また,Cysの添加濃度に対する消光ディップ値の減衰には,線形性を有することが確認された.以上の結果から,微小容積の分光セルを用いても金ナノ粒子が凝集したことによるLSPRに基づく消光スペクトルの変化を取得できることが明らかとなった. 4.結論 本報告では,フェムト秒レーザーによる光ファイバへの加工とその応用について述べ,特に穴あけ構造を採用した光ファイバ(光ファイバ型分光セル)に着目し,後半では試験的な計測の応用についての検証結果を示した.また,金ナノ粒子の生体センシング手法の特にナノ粒子凝集を利用した例を紹介し,光ファイバ型分光セルとの組み合わせによる生体分子検出・計測の可能性を明らかにした.光ファイバを貫通する穴あけ構造の形成についてのフェムト秒レーザーの照射パラメータが明らかになり,金ナノ粒子分散溶液の注入によるナノ粒子固有の消光スペクトルが取得可能であることを示した.さらに,金ナノ粒子分散溶液にL-システインを添加することで,金ナノ粒子が凝集し,それによる光学特性の変化を消光スペクトルの変化として取得できることを明らかにした.本研究課題によって,微小体積で検出可能な分光計測手法が提案され,新たな光学手法が実現された. 本研究は公益財団法人天田財団からの2018年度奨励研究助成(若手研究者)(AF-2018226-C2)によって実施されました.ここに深く感謝の意を表します. Oliveira, Appl. Surf. Sci. 288, 313 (2014). 37(18), 4864 (2019). Lett. 34, 3328 (2009). B-Chem. 210, 685 (2015). Watanabe, Appl. Phys. A 122, 825 (2016). Opt. Commn. 410, 8 (2018). (2019). − 252 −

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