助成研究成果報告書Vol.34
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図7 波長520 nmの消光値のL-システイン濃度増加に伴う推移 図5 光ファイバ分光セルへの金ナノ粒子注入による消光スペクトル取得 図6 光ファイバ型分光セルを用いたL-システイン添加による金ナノ粒子凝集による消光スペクトル変化の追跡 を取得した.小型分光器の設定は,集積時間を3 ms,平均化回数を200回とした.金ナノ粒子を含まない純水を分光セルに注入し,分光セルを透過した光強度スペクトルを取得した.純水の光強度スペクトルを基準とし,金ナノ粒子分散溶液を注入した際の光強度スペクトルとの比から,金ナノ粒子分散溶液を注入したことによる消光スペクトルを算出した.金ナノ粒子分散溶液のナノ粒子粒径は5–10 nmの平均8.1 nmであり,質量濃度は0.5から4.0 wt%の範囲のものを用意した.金ナノ粒子分散溶液を光ファイバ型分光セル内に注入した際の消光スペクトルを図5に示す.金ナノ粒子の濃度の増加に伴い波長520 nm近傍を中心とした消光値のディップは増加し,4.0 wt%では5.5%の光減衰を示した8).また,用いた試料濃度が高い場合,650 nm近傍よりも長波長側で消光スペクトルが1.0より大きな値となった.金ナノ粒子分散溶液には凝集を防ぐ保護剤としてPolyvinylpyrrolidone(PVP)が含まれており,分散を保つため金ナノ粒子質量濃度増加に伴いPVPの濃度も高くなっている.つまり,金ナノ粒子分散溶液の実行屈折率は,純水よりもわずかに高くなっている.それにより純水の場合と比較してセル内部の実効屈折率が伝送路の屈折率に近づき,分光セルを通過する伝搬光が純水の場合より強くなった.従って,光強度比の値が1.0よりも大きくなり,金ナノ粒子質量濃度増加に伴い顕著に現れたと考えられる.また,図5内の破線は光路長を3 m,分光セル内部の粒子数を4.0×1014 個/mLと想定したランベルト・ベールに基づく数値計算から取得した消光スペクトルである.波長520 nm近傍にて消光ディップを有し,実験結果との大きな差がみられないことから得られた消光スペクトルは金ナノ粒子に基づくことを示した. 3.2 生体分子添加による金ナノ粒子凝集の追跡 提案した光ファイバ型分光セルを用いた分光計測構成でアミノ酸添加による金ナノ粒子凝集過程を検出可能か検証した.分散溶液内の金ナノ粒子を凝集させる生体分子は多く存在する.親水性の非必須アミノ酸であるL-システイン(Cys)も金ナノ粒子分散溶液に添加することで金ナノ粒子を凝集させることができる.金ナノ粒子分散溶液の金ナノ粒子の濃度(粒子数)を一定にし,Cys添加による消光スペクトルのディップの消光値変化量や極小値波長シフトを追跡することで,Cysに対する濃度の定量が期待できる.構築した光ファイバ型分光セルを用いて,金ナノ粒子分散溶液にCysを添加したことによる消光スペクトルの変化を追跡した.金ナノ粒子分散溶液に添加するCysの濃度は0–5.0 mMの範囲のものを用意した.消光スペクトル取得の際,Cysの濃度は変化させたが,金の質量濃度はすべての条件で4.0 wt%と一定に保った.金ナノ粒子については,3.1節と同様に平均8.1 nmの粒径のものを使用した.分光セル内部にCysを含む金ナノ粒子分散溶液で満たした際の光強度スペクトルを取得し,純水を用いた場合の光強度スペクトルを基準として消光スペクトルを算出した. 金ナノ粒子分散溶液内にCysを添加したことによる消光スペクトル特性を取得した9).図6の結果から,Cysの濃度5.0 mMへ増加するにつれて520 nm近傍の消光ディップの深さが減少する傾向を得た.これは,Cysの添加によって金ナノ粒子に凝集が生じると分散溶液中のナノ粒子の粒径は増加し,初期粒径である8.1 nmのナノ粒子の単位mL当たりの数が減少したことに起因している.Cys添加に伴う消光スペクトルの消光極小値の長波長側へのシフトは確認できなかった.これは,凝集した金ナノ粒子のサイズ,形状が分散溶液中に一定にならなかったためと − 251 −

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