助成研究成果報告書Vol.34
242/332

キーワード:粉体成形,酸化亜鉛,圧縮せん断法 SEM像 図3 酸化亜鉛粉末の TEM像 図2 酸化亜鉛粉末の 図1 酸化亜鉛(ZnO)は古くからゴムへの添加材や顔料,医薬品,化粧品など様々な分野で利用されてきた.近年,その透明かつ導電性を有するという特性から,主に希少元素を含む酸化インジウムスズ(ITO)透明電極の代替材料として液晶ディスプレイ等に実用化されている.また,半導体としての特性も併せ持つことから,太陽電池用材料としての急激な需要増が見込まれている(1).しかし,その成形手法はスパッタ法(多結晶薄膜),水熱合成法(単結晶バルク材)が主であり,いずれも高度で化学的安定性の高い成形技術が求められるため,より簡便な成形手法が望まれている. 一方で粉末を製造することは比較的容易であり,現在生産されている酸化亜鉛の多く(国内生産で5~6割)が粉末としてゴムへの添加材に用いられている.そこで申請者は,粉末冶金的技術に塑性変形を応用した手法による酸化亜鉛粉末の薄板材への成形を提案する. 我々の研究グループで近年開発された粉体成形手法に,圧縮せん断法がある(図1)(2).圧縮せん断法は,粉末冶金法では加熱処理により接合していた粉末を,二軸の加圧により粉末材料を塑性変形させ,粉末同士の間で摩擦を生じさせることで接合し,一枚の薄板形状に成形する手法である.圧縮せん断法では,アルミやチタンといった純金属材料であれば常温で固化成形できるなど,従来の粉末冶金法と比較して低温域での粉体成形が可能である(3)(4)(5)(6).従って,高温処理に伴う材料の変質を低減でき,化学的安定性に優れている.先行研究では主に金属材料の成形手法として研究がなされてきたが,粉体であれば金属に留まらず非金属材料も成形可能であることが明らかになっており,木材や紙,半導体ではSiの固化成形に成功している(7).また近年開発された加熱システムにより,常温だけでなく数百℃までの温度域での温間プロセスを行うことが可能になった(8)ため,ZnOのような金属材料と比較して硬質な材料でも材料表面を活性化させることによる成形性の向上が期待できる.また,ZnOの透明性などの性能は結晶の (2018年度 奨励研究助成(若手研究者) AF-2018049-C2) 配向性に左右されるため,従来,熱処理やイオン衝撃によりその結晶性を制御していた.圧縮せん断法においては,成形過程でせん断を加えることにより材料が結晶の配向することから,ZnOの結晶配向性を成形プロセス中に制御できると考えられる.更に,圧縮せん断法では一度の成形に用いる粉末量を調整することで様々な大きさの成形体を成形できる.従って,薄膜からバルク材までのスケールのZnO材料を圧縮せん断法だけで成形可能になることが期待される. 本研究では,ZnO導電性薄板の成形を目的とし,圧縮せん断法を用いてその粉末から薄板材への固化成形を試みる.特に本研究課題では(1) ZnO粉末の固化成形,(2) 透明性・導電性の発現,(3) サイズ制御の三つを段階的な目標とする.また,得られた成形体の接合状態を硬さ試験,結晶性をX線回折により評価する.また透明性と成形サイズに関しては外観観察,導電性に関しては四探針法によって評価する. 2.実験方法 本研究では,酸化亜鉛にアルミニウムを添加した,アルミニウムドープ酸化亜鉛粉末(ハクスイテック株式会社)を原料として用いた.図2,図3に原料粉末の透過型電子顕微鏡(TEM)像と走査型電子顕微鏡(SEM)像をそれぞれ示す.1次粉末粒径は図2のように120 ~ 250 nmであるが,図2のように粉末は5 ~ 10 μmの大きさに凝集していることがわかった. 本研究では,加工温度が成形体に与える影響を明らかにするため,常温での加工と温間での加工の2種類を行った.常温での加工プロセスは以下のとおりである.(1)固定板と呼ばれる金型の上に原料粉末を設置する.(2)その後,移動板と呼ばれる金型を粉末の上に設置し2枚の金型を通して粉末に圧縮応力を付与する.(3)この圧縮応力を保持した状態で移動板を一定の速度で一定方向に変位させることで,粉末にせん断ひずみを付与し,これらの工程に 1.研究の背景と目的 圧縮せん断法の概念図 東北大学 流体科学研究所 助教 武田 翔 − 240 −塑性加工を利用したZnO透明導電性膜の新しい成形手法の確立

元のページ  ../index.html#242

このブックを見る