表1 供試材の公称組成(mass%) 図1 供試材の極点図 キーワード:マグネシウム合金,温間加工,スプリングバック 1.研究の目的と背景 近年,資源の有効利用や地球環境保全などの観点から輸送機器の軽量化や材料のリサイクルが重要視され1),比強度,比剛性,制振性など構造材料としての多くの利点を有するマグネシウム合金が注目されてきた2).しかし展伸材としての需要は,成形性,特に冷間成形性が悪いことから伸び悩んでいる.これは,薄板では六方晶のc軸が圧延面に垂直に配向し,特に板厚減少を伴う面内二軸引張での成形限界ひずみは極めて小さい.そのため,非底面すべりが容易になる200~300℃でプレス成形されているのが現状であり,冷間ないしそれに近い低温で成形できる材料も報告されてはいるが実用化には至っていない.そこで本研究では,マグネシウム合金板の主に100~200℃の温度域における温間成形技術を確立するために,マグネシウム合金板の温間における変形挙動を実験的に把握すること,プレス成形におけるスプリングバックを主に実験的に調査することを目的とし,温間単軸引張試験および,温間引込み曲げ試験を行った. 2.実験方法 2・1 単軸引張試験 マグネシウム合金板の温間プレス成形性に強く影響を及ぼす材料特性として変形抵抗と延性がある.これらの材料特性に及ぼす温度とひずみ速度の影響を調べた実験研究は多いが,その多くは200℃以上の高温で行っている.温間プレス成形では,省エネルギーや生産性,さらには成形品の機械的性質の観点から,成形温度はできるだけ低くできることが望ましい.そのことを意識すれば,200℃以下の材料特性は重要であるが,詳細なデータが少ない. そこで本研究ではまず温間単軸引張試験を行い,変形抵抗と延性に及ぼす温度と変形速度の影響を調査した. 2・1・1 供試材 供試材として,大阪富士工業株式会社製のAZ31Bマグネシウム合金圧延板を用いた.供試材の公称組成を表表11に,焼鈍後の極点図を図図11にそれぞれ示す.図1において濃淡で示されるX線の回折強度は粉末試料での値を1として規格化した.本材料はc軸が圧延面に垂直に配向した強い底面配向の集合組織を示す. 広島商船高等専門学校 商船学科 (2018年度 奨励研究助成(若手研究者) AF-2018048-C2) 助教 片平 卓志 2・1・2 単軸引張試験方法 単軸引張試験により,各種条件下での真応力-真ひずみ曲線取得した.なお試験回数Nは各種試験についてそれぞれ3回とした.これらの試験結果は,各種試験における供試材の成形性を評価する上で基礎となる必要不可欠なデータである. a) 試験片 試験片形状を図図22に示す.試験片は平行部長さ35mm,板幅6mmであり圧延方向に対して0°方向にワイヤー放電加工で切り出して用いた.切り出し後,十分なひずみ除去と試験片ごとのばらつきを抑えるため,条件を300℃で30分間として焼鈍した.焼鈍後,エタノールで試験片表面を脱脂した. b) 試験装置 試験装置の外観図を図図33に示す.試験機は株式会社島津製作所製の油圧式サーボパルサー(定格荷重100kN)を使用した.試験片に掛かる荷重はロードセルを用いて測定した.試験片の変位は試験片の2箇所の切り欠きに石英ガラス棒を固定し,変形時の切欠きの間隔の変化を電気炉外で逐次,レーザーを用いた変位測定器で測定した.試験片の温度管理はR型熱電対を試験片平行部の上・下部の2箇所にスポット溶接し,それぞれの熱電対を温度制御器に接続し,電気炉をPID制御して行った. c) 試験方法 試験片断面積算出のため,試験片平行部の板幅および板厚をマイクロメーターでそれぞれ5点測定し平均値を算出した.ひずみの取得には,試験片の2箇所の切り欠きに石英ガラス棒を固定し,変形時の切欠きの間隔の変化を電気炉外で逐次,株式会社キーエンス製のレーザー変位測定器を用いて測定し算出した. − 234 − スプリングバックにおよぼす温度・速度・潤滑剤の影響 AZ31マグネシウム合金の引込曲げ試験の
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