助成研究成果報告書Vol.34
234/332

図6 900℃, 初期ひずみ速度5×10-4 s-1 の条件での単軸 実験はAr雰囲気中で行っているが、多少混入する酸素により表面酸化が生じた。図3に見られるように、図2で見られるような銀白色は失われたが、即座に性能が損なわれる程度のものではない。試料接触部についても目視および指触により検知できるような変形はなく、結果的には今回の実施条件では治具として十分に機能したと結論できる。 中性子回折実験としては、回折線経路に治具が重なる検出器によるデータも十分に解析に堪えるものであることが確認された。懸念された治具による多重散乱線は一切見られず、吸収の影響は補正により取り扱いが可能なレベルであった。図5はFe-15Ga試験片をセットし、加熱前に測定されたiMATERIA BANK 99において測定された回折図形である。これに見られるようにα-Fe, すなわち試料の結晶以外にノイズのピークが見られるが、これらは入射スリットとして取り付けたB4Cによるものであることを確認している。今回開発したV合金が中性子的に「透明」な材料とすれば、B4Cは中性子を完全に吸収して遮る「黒色」材料として、中性子関連の装置開発には頻繁に用いられている材料である。 このような材料のブラッグ回折ピークが見られることは、予想していなかったが、これはかえって無かった方が良かったようである。実験手法的には、今後も改善が必要である。 図5 開発したV合金治具に設置した状態で測定したFe-15mol%Gaの回折図形。 図6は回折データより計算された、高温変形中の圧縮軸への結晶軸配向を示す逆極点図である。BCC金属の室温での変形では、すべり変形に伴う結晶回転の結果として、ひずみ増加に伴い<001> ,<111>の両者の発達が見られるのが普通である。しかしながら、筆者らが過去に報告しているように、高温では変形条件にもよるが<111>の発達は抑制され、<001>の圧縮軸への配向が強くなる11)。特に変形後半ほどその傾向が強くなる。これは<001>配向を持つ結晶粒が変形中に粗大化するためで、筆者らは優先動的結晶粒成長と呼んでいる。 ところがその配向の強さは平均軸密度の4倍程度であり、10倍以上の値が見られた変形後試料のX線回折測定の結果と一致しない。これはX線測定が板厚中心断面に行われていたことに対し、中性子回折測定の結果には治具との接地面近傍の体積の寄与も含まれていることによると思われる。過去の研究により、こうした領域ではほとんど集合組織が発達しない、すなわち変形は不均一であり、ほとんど変形しない領域があることが分かっている。 このように、高温変形中のその場中性子回折測定は、試料全体の組成流動と関係した情報を与えることが明らかとなった。 圧縮変形中のその場中性子回折実験により求めた、圧縮軸方向への結晶軸密度配向。 4.まとめ 中性子回折線経路にあっても回折実験の障害とならないような、中性子的に透明な材料であり、かつ高温強度を担保できる材料の開発を行った。当初想定していたミディアム~ハイエントロピー系合金では室温での脆性的なふるまいが制御できなかったことから、原子炉材料として研究事例のあったV-Cr-Ti系合金を採用した。この合金は室温での強度はあまり高くないが、高温での強度減衰が小さいとされる。鉄系合金を用いた実証試験では高温圧縮変形中の集合組織変化を捉えるその場観察実験に成功した。 − 232 −

元のページ  ../index.html#234

このブックを見る