助成研究成果報告書Vol.34
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図3 高温圧縮治具および試料の外観図。 3.結果と考察 3・1 合金種の選定 表1に示した合金のうち、ハイエントロピー合金系の2種については、500HVを超える、工具鋼相当の優れたビッカース硬度を示した。しかしながら靭性を著しく欠き、図4 (a) 鍛造後および(b)900℃で4時間の熱処理した後の 3・2 圧縮変形中その場中性子回折実験 図3に示した治具を用いて、その場中性子回折実験を行った。試料は筆者が過去の研究10)で用いたFe-15mol%Ga合金とした。この合金は室温で150HV以下の強度であり、高温での降伏応力は高々数十MPaであることが分かっていたので、強度に不安要素のある本研究の開発治具でも問題なく変形できると考えた。 実験結果の前に実験後の治具の状態について述べておく。これまでに900℃における高温変形実験を5回行っているが、治具全体にクラックや変形は全く認められない。V-5Vr-5Ti合金の微細組織。 切断のためのバイス固定において割れてしまうことが頻発した。この靭性のなさはZrリッチのデンドライト構造と粒界偏析に由来するものと思われ、これを破壊することを目的に高温鍛造を試みた。しかしながら高温においても靭性改善が見られず、鋳塊はばらばらとなってしまった。このため、治具としての形状へ成形することは困難であった。 以上の事実からハイエントロピー合金系の利用をあきらめ、V-Cr-Ti合金を用いることにした。V-Cr-Ti合金は原子力材料としてその特性について比較的多くの文献があり、BCC合金でしばしば問題となる延性・脆性遷移温度と組成の関連も調査されていた7,8)。合金元素が多いほど固溶体合金の強度は高まるが、室温で脆性的となる。これは機械加工等において問題となる可能性があった。このため、合金元素添加量はこれを回避できるV-5Cr-5Tiとした。これらは似通った原子量を持つため、原子分率としても質量分率としてもほとんど組成は変わらない。このため製作時の混乱が起こりにくいV-5mass%Cr-5mass%Tiを目標組成とすることにした。 鍛造後のビッカース硬さは200HV, これを900℃で4 時間熱処理した際の硬さは156HVであった。図4にEBSD測定によって捉えた熱処理前後の微細組織を示す。硬度変化のわりに粒径などの大きな変化は見られず、硬度の違いは回復による転位密度の低下によるものと思われる。150~200HVという硬度はおおむね工業用2種純チタンやステンレス鋼程度であるが、Smithらが示すように、この合金は高温でも降伏強度が大きく減少しないという特徴がある8)。この強度発現メカニズムと、実際に筆者の作製した合金の高温強度は現在調査中であるが、これを信じれば高温で著しく強度を失う材料(ほとんどの材料はそうである)については適用可能であると結論した。 − 231 −

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