N2+Ar混合ガス流量 (ml/min) 図7 膜構造に及ぼす基板バイアス電圧の影響に関する図5に膜組成(B,C,N)に及ぼすアーク電流の影響を示す.また,図5にも,h-BN焼結体の組成分析結果を横軸水平に示す.アーク電流の減少に伴い,ターゲット由来のBやCの濃度が減少するのに対して,ガス由来のNの濃度が増大する傾向が認められた.アーク電流が30 A以下になると,膜中B濃度がh-BN焼結体のB濃度と同等になることがわかる.3・1節の実験結果との比較は容易にできないが,アーク電流60 AかつN2ガス分率0.2である図2と図5のデータを参照すると図2のデータの方が,明らかにN濃度が高くC濃度が低い.一因として,シールド有無の影響が考えられるが,系統的な実験を行っていないため詳細は不明である.本実験結果から,アーク電流を30 A以下にすることによってh-BN膜を得られる可能性が示唆された. 図5 膜組成に及ぼすアーク電流の影響 3・3 膜の組成および構造に及ぼす基板バイアス電圧の影響 以上の実験結果より,c-BN膜を合成するのに必要なh-BN膜を得るためには,高N2ガス分率かつ低アーク電流とすることが有効である可能性が示唆された.また,c-BN膜を合成するためには,高いエネルギーのイオンを膜に衝突させる必要があり5),そのため高い負の基板バイアス電圧を印加することが有効であると考えられる.以上の仮説を検証するため,高N2ガス分率かつ低アーク電流の条件で,基板バイアス電圧のみを変化させた表3に示す成膜実験を行った.なお本実験でも,パルス基板バイアス電圧を印加した. 表3 高N2ガス分率かつ低アーク電流の成膜条件 成膜装置 シールド アーク電流 (A) 全圧 (Pa) パルス基板バイアス電圧 (V) ヒーター温度 (℃) 成膜時間 (min) N2ガス分率 UBMS202 有り 20 500 0.2 約1.5 -100 700 10 図6に膜組成(B,C,N)の分析結果を示す.また,図6にも,h-BN焼結体の組成分析結果を横軸水平に示す.いずれの膜も,h-BN焼結体と比較して,BがNに対して過剰でないことを確認できる.図7に膜構造に及ぼす基板バイアス電圧の影響に関する赤外吸収スペクトルを示す.-100 Vのパルス基板バイアス電圧で成膜した膜においては,h-BN構造に相当する1360 cm-1と760 cm-1の両方の位置にピークが認められた.このように,成膜パラメータを適切に設定すれば,h-BN膜を得られることが確認された.さらに,c-BN膜を得ることを意図して,高い負のパルス基板バイアス電圧(-300 V)を印加すると,メインのピーク位置が若干低波数側にシフトする結果が得られた.また,c-BN構造に相当するピーク(1050 cm-1)は認められたが,その強度は大きくなかった.そのため,この膜は,c-BNを含んでいたとしてもごく僅かであり,c-BNが主成分の膜とは言えないと判断した.c-BN構造に相当するピーク強度を大きくするためには,さらに大きなエネルギーをイオンに付与する必要があると考えられる. 図6 膜組成に及ぼす基板バイアス電圧の影響 -300 赤外吸収スペクトル 22 − 227 −
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