(●:硬さ,◆:弾性率) N2+Ar混合ガス流量 (ml/min) 図4 硬さ・弾性率に及ぼすN2ガス分率の影響 以上の実験結果から,N2ガス分率は膜の組成,構造および硬さ・弾性率に影響を及ぼすことが明らかとなった.N2ガス分率0.35の条件で得られた膜の硬さ・弾性率の値は既報のh-BN膜の硬さ・弾性率と概ね一致していた.しかし,一般的にh-BN膜に同時に認められる2つの赤外吸収スペクトル(1360 cm-1と760 cm-1)が認められなかったことから,今回得られた膜はh-BNが主成分の膜ではなく,B-N結合やC-N結合が混在するBCN膜と考えられる6)10). 膜の組成と構造に及ぼすN2ガス分率の影響調査結果から,N2ガス分率をさらに増大すればh-BN膜を得られる可能性がある.しかし,N2ガス分率をさらに増大させるとアーク放電が不安定になり,安定的な成膜プロセスを維持できないという課題に直面した.そのため,以下の実験では, 3・2 膜の組成に及ぼすアーク電流の影響 膜組成に影響を与えうる因子としては,ガス組成のほかに,アーク電流が挙げられる.アーク電流はターゲットを構成している元素の蒸発量に影響を与えるため,ターゲット由来のイオンと雰囲気ガス由来のイオンの密度バランスにも影響を与える可能性がある. 表2に示すように,N2+Ar混合ガス流量,N2ガス分率,基板バイアス電圧などを固定し,種々のアーク電流で成膜実験を行った.なお以降の実験では,パルス基板バイアス電圧を印加した. 表2 アーク電流の影響に着目した成膜条件 パルス基板バイアス電圧 (V) と高波数側にシフトすると報告されている6).今回,赤外吸光スペクトルのピークは1190 cm-1に位置するため,B4C(1100 cm-1)6)よりも相対的にC濃度が高い可能性がある.N2ガス分率が増大すると,赤外吸収スペクトルのピーク位置(図3の◆)は高波数側にシフトする.Nが関与する結合として,C-N結合(1210,1260 cm-1)とB-N結合(1370 cm-1,760 cm-1)がある7,8).N2ガス分率の増大に伴って,赤外吸収スペクトルのピークが高波数側にシフトするのは,Nが関与する結合(C-N結合やB-N結合)にB-C結合が徐々に置き換わるためと考えられる.N2ガス分率が0.35まで上昇しても,h-BN構造に対応するピーク位置(h-BN TO;1370 cm-1 )までシフトせず,h-BN LO(760 cm-1 )のピークも認められなかった. 図3 N2ガス分率の膜構造に及ぼす影響に関する 赤外吸収スペクトル (◆はピーク位置) 図4に膜の硬さ・弾性率に及ぼすN2ガス分率の影響を示す.N2ガス分率の増大に伴い,硬さ・弾性率ともに減少する傾向が認められた.炭化ホウ素膜の硬さ・弾性率は文献によって異なるが,硬さは25~30 GPa,弾性率は200~250 GPaの範囲内にある場合が多い8).今回,N2ガス分率が0(Ar雰囲気)で成膜した膜の硬さ・弾性率は既報の炭化ホウ素の値とほぼ一致している.h-BN膜の硬さ・弾性率も文献によって異なるが,例えば,Kimらは硬さが8~10 GPa,弾性率が60~110 GPaと報告しており9),今回N2ガス分率0.35で成膜した膜の硬さ・弾性率とほぼ一致している.炭化ホウ素(B-C結合)膜に窒素が侵入し,B-N結合やC-N結合を含むBCN膜が形成されると,膜中N濃度の増大に伴って硬さ・弾性率が減少することが報告されている10).本実験において,膜中N濃度の増大に伴って硬さ・弾性率が減少したのも,BCN膜が形成されたためと考えられる. N2ガス分率を0.2に固定し,h-BN膜を得るための成膜条件をさらに検討した. N2ガス分率 成膜装置 シールド アーク電流 (A) 全圧 (Pa) ヒーター温度 (℃) 成膜時間 (min) UBMS202 無し 10~60 200 0.2 約0.7 -350 700 5~20 − 226 −
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