助成研究成果報告書Vol.34
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図6.SUS304を水素添加後10%延伸し,10 µm表面除去試料のアニール処理によるPALS結果 3・3 オーステナイト系ステンレス鋼SUS316L SUS316Lは,SEM画像によると-100 ℃から-40 ℃での変形では水素脆化し,それ以外の温度では水素耐性が高い図8.水素添加SUS316Lを-150 ℃で破断まで延伸した試料の温度可変PALS結果 図7.SUS316Lを-70 ℃で10%延伸した試料のKAMマップ 水素なし 空空孔孔ククララススタターー 転転位位 水素あり ババルルクク 転転位位 命化していることが示された.この結果から,水素に結合した単空孔レベルの欠陥が生成し,温度上昇に伴い凝集し,空孔クラスターへと成長していくと考察された.-70 ℃ で延伸材では(図9),-150~-100 ℃で325~375 ps の欠陥が形成した.この欠陥は温度上昇に伴い寿命値が長くなり,欠陥サイズの増大が観察された.この結果から,-150 ℃延伸材と異なり-70 ℃での延伸材では延伸時にすでに空孔クラスターが形成しているという違いがみられた.室温での延伸材のPALS結果では(図10),空孔クラスター成分の温度依存性はみられなかった.比較的短い寿命値である250~300 ps の欠陥が検出し,-70 ℃と比較してサイズの小さい空孔クラスター形成がみられた.一方で,相対強度は大きいという結果が得られた. その立証のためアニール実験を行った.水素添加後,10%延伸し10 µm 表面除去,アニールした試料のPALS結果を図6 に示す.100 ℃アニールで ~180 ps成分は回復したことから,この欠陥は回復温度の低い単空孔レベルと帰属される.水素添加材を延伸すると空孔-水素複合体が形成し安定化するが,100 ℃アニールで水素は空孔から脱離し,単空孔が回復したと考察した.以上の結果から,空孔-水素複合体は,亀裂に発展して水素脆化を引き起こす空孔クラスターの前駆体として特定された. ことが確認した.従来の解釈では,低温になるほど加工誘起マルテンサイトしやすいが,逆に水素の拡散係数が低下することにより説明されている.一方,室温のPALS測定で低温になるほど空孔クラスターは大きくなることが明らかとなり,従来解釈では不十分と考えられた.各延伸温度での破断材における加工誘起マルテンサイト相形成量は水素添加による影響をみられなかったから,加工誘起組織であると考えている.-70 ℃で10%延伸した試料(γ相のみ)のKAMマップは(図7),水素添加によってひずみの不均一性が助長され,高ひずみ場は粒内にも存在し,その高欠陥領域に空孔型欠陥が局所的に形成している可能性が示唆される. -150 ℃で延伸材の低温PALS結果4)は(図8),転位に加えて200 ps 程度の欠陥が生成し,温度上昇に伴い長寿 − 201 −

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