助成研究成果報告書Vol.34
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図1.塑性変形しながら陰極電解水素添加法 2・2 オーステナイト系ステンレス鋼SUS304 オーステナイト系ステンレス鋼SUS304をダンベル状(ゲージ部:10 mm 幅,20 mm 長,0.2 mm 厚)に加工を施した後,Ar雰囲気で900 ℃で5分間溶体化処理を行った.水素添加は電解水素チャージ法により,電解液3% NaCl + 3 g/l NH4SCN 水溶液,電流密度 50 A/m2,室温,48時間で行った.数十℃での電解水素チャージでは,表面層 10 µm程度にしか水素は導入されず,その添加層には ε相 や α’相が形成するが,水素脆化する.引張試験は室温,ひずみ速度4.17×10-4/s で行った.表面水素添加層は電解研磨法により,研磨液H2SO4:H3PO4=2:3(体積比)混合溶液,室温,電流値 4 A で除去を行った.α’相や ε 相の形成を確認するため,各処理過程で XRD 測定を行った.陽電子寿命測定は室温で行い,寿命スペクトルは 2~3 成分で解析した.形成欠陥の帰属のため,100~600 ℃で各温度 20 分間保持の条件でアニール処理した. 2・3 オーステナイト系ステンレス鋼SUS316L 12質量%のNi含有量のSUS316Lをダンベル状(幅12.5 mm,ゲージ長 50 mm,厚さ 0.5 mm)試験片に加工した.熱処理は1050 °C で30 秒大気熱処理した後空冷し,430 °C で 10 秒処理した後空冷で行った.水素導入は高図2.水素添加純鉄の水素応力-ひずみ曲線 水素存在下で延伸した純鉄全ての試料において陽電子寿命スペクトルはバルク,~150 ps の転位・空孔成分に加えて,200 ps 以上の空孔クラスター成分が検出された.図3に低速ひずみ材及び高速ひずみ材の温度可変陽電子寿命測定の結果を示す.2)両試料で空孔クラスター成分が検出され,低速材では250 Kから420 Kまで空孔クラスター成分の寿命が増加したが,高速材は300 Kから315 Kでのみ増加がみられた.低速材と高速材の欠陥の熱的挙動を度50 A/m2).α鉄中の水素の拡散係数は非常に大きいため, 30分間のプレチャージを行った後,水素脆化を引き起こすには水素チャージしながら塑性変形した(図1).水素脆化は延伸速度に依存することから,伸速度2.2×10-5 /sと3.3×10-4 /sで16%ひずみ量まで延引張試験を行った.水素チャージ変形試料(室温)を室温で 1 時間時効して水素を除去した後に速やかに液体窒素中に投入し急冷した.その後,170 Kから520 Kまで測定温度を変化させPALS測定を行った.低温測定ではクライオスタットを用いた.寿命スペクトルでは100万カウント積算し,3回測定し,解析はPALSfitを利用して 3 成分解析を行った. 温高圧水素ガスチャージ法により,水素ガス圧 90 MPa,室温,72時間で行い,水素量は 90 ppm となった.この水素導入方法によって,試験片全体に均一に水素が導入される.引張試験は歪み速度8.3×10-4/sで数種の低温で行った.加工誘起(α’)マルテンサイト相はフェライトメータによって破断部近傍で測定した.試料表面の電子線後方散乱回折法によるひずみ分布(KAM マップ)の観察を行った.低温での延伸材は低温を保持したままPALS測定を行い,寿命スペクトルは 2 成分で解析した. 3.研究成果 3・1 純鉄 水素存在下で純鉄を引張試験することにより,低速材は水素脆化するが,高速材では水素脆化は起こらず,水素脆化は延伸速度に強く依存することを確認した(図2). 比較することで,変形中の生成欠陥を区別できた.低速材では単空孔が移動可能な220 K以上で空孔クラスター形成が開始したが,高速材では延伸中ですでに転位の切りあいにより生じた単空孔が可動して空孔クラスターが形成されていたことがわかる.この結果から,水素脆化有の低速材では,水素が単空孔に捕獲され,空孔-水素複合体を形成し安定化していることを示唆し,水素脆化の支配欠陥を特定された. 低速度 高速材 − 199 −

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