キーワード:コールドスプレー,メカニカルミリング,冷間圧延,ナノ結晶,金属材料 象に,MM法によりナノ結晶化した粉末をCS法により一般構造用圧延鋼材(SS400)平板基材表面に成膜した.成膜された皮膜の組織や機械的特性を調査するとともに,冷間圧延による皮膜特性改善の可能性について検討した. 2.実験方法 2・1 MM法による粉末処理方法 伊藤機工(株)製の純鉄粉末(C: < 0.007 mass.%, D50=26.8 µm)に対し,遊星ボールミル(P-7 Classic-line, フリッチュ(株)製)によりMM処理を施した.容積が45 mlの窒化ケイ素製のポッドに直径8 mmのSUJ2鋼球とともに同粉末を封入し,大気環境下で回転数1400 rpmにて20 h処理した.以降,本粉末をMM_Feと表記する.また,大同特殊鋼(株)製のSUS410L粉末(D50=9.0 µm)に対し,遊星ボールミル(P-6 Classic-line, フリッチュ(株)製)によりMM処理を施した.容積が250 mlのSUS440C製のポッドに直径10 mmのSUJ2鋼球とともに同粉末を封入し,回転数を820 rpmとし,大気環境下で30 h処理した.以降,本粉末をMM_SUSと表記する.これらの粉末に対し,後方散乱電子回折(EBSD)分析を行い,結晶粒径を評価した.EBSD分析には,(株)日立製作所製の走査型電子顕微鏡(SEM,SU-70)とそれに搭載されたTexSEM Laboratories, Inc.製の分析装置を用いた. 2・2 CS法による成膜方法 予備試験として実施したMM_Fe 単体の成膜試験において,成膜効率が低く厚膜化が困難であることが確認された.このため,MM処理粉末と未処理粉末を混合した混合粉末を準備した.MM_Feについては未処理粉末を20 wt.%混合した混合粉末,MM_SUSについては未処理粉末を10および30 wt.%混合した混合粉末を作製した.以降,各混合粉末をそれぞれMM_Fe20,MM_SUS10,MM_SUS30と表記する.これらの粉末をプラズマ技研工業(株)製のCS装置(PCS-100)により,40×40×10 mmのSS400平板基材上に成膜した.作動ガスには窒素を用い,作動ガス圧力および温度をそれぞれ5 MPa,1273 Kとした. 2・3 冷間圧延方法 冷間圧延には物質・材料研究機構(NIMS)が所有する(株)日本クロス圧延製の冷間4段ロール圧延機(120DX270W-300DX250W)を用いた.同機には圧延可能な試料厚さが5 mm以下という制約があるため,試験片の耐食性が要求されるタービン部材等には,レアメタルや戦略物質を含んだ合金の使用が不可欠となっている.資源の有効活用,価格変動リスク回避およびリサイクル性向上といった点から,レアメタルや戦略物質を含まない構造材料が切望されている.添加元素によらない金属材料の強化法の1つとして,結晶粒微細化が有効であることが広く知られている.特に結晶粒径を100 nm以下まで微細化したナノ結晶材料は,高強度のみならず超塑性現象や高耐食性といった優れた特性を示すことから注目されている1). 結晶粒を微細化するための手段として,TMCP(Thermo-Mechanical Controlled Process),ECAP(Equal Channel Angular Pressing),ARB(Accumulative Roll Bonding),MM(Mechanical Milling)などの手法が提案されている.これらは材料に大きなひずみを与え,連続動的再結晶により結晶粒を微細化するものであり,いずれも塑性加工に分類される.MM法は,ナノ結晶組織を有する金属粉末を比較的容易かつ大量に製造することが可能である.しかしながら,粉末からバルク材を作製するためには高温下で焼結処理を行う必要がある.そのため,ナノ結晶が粗大化する課題がある.また,大型構造部材への適用も困難であり,適用範囲が限られているのが現状である.MM法により作製したナノ結晶粉末を,ナノ結晶組織を維持したまま大型部材へ適用が可能となれば,ナノ結晶材料の実用化が大きく進展し,品質の向上,運用コスト低減,安全性の確保,リサイクル等に貢献できることが期待される. 本研究では,ナノ結晶組織に基づいた優れた特性を有するバルク材を製造するための新たな塑性加工プロセスを開発することを目的とする.そのプロセスとは,MM法により処理した粉末をコールドスプレー(以下CS)法により平板基材上に成膜し,得られた皮膜を基材ごと冷間圧延するものである.CS法は,空気や窒素等の高圧作動ガスにより数十µm程度の微粒子を超音速ノズル内で一気に加速し,粒子を溶かすことなく基材表面に衝突・堆積させることにより皮膜を形成する技術である.成膜速度が速く,大面積に短時間で皮膜を形成可能である.また,cmオーダーの厚膜も形成できる.しかしながら,強度や延性などの皮膜特性や皮膜/基材間の密着強度などに課題があり,実用化に向けては改善が必要となっている. 本研究では,純鉄およびSUS410L(12Cr鋼)粉末を対1.研究の目的と背景 発電および化学プラントにおける配管や,高強度かつ高東京理科大学 工学部機械工学科 (2018年度 奨励研究助成(若手研究者) AF-2018038-C2) 助教 伊藤 潔洋 − 193 −3つの塑性加工プロセスに基づいたナノ結晶金属材料の創製
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