図4 摩擦しゅう動により薄膜コーティングから生じる電子エミッションの測定装置概略. 図5 3D-CADにより設計された電子エミッション測定摩擦装置. 図6 実際に開発された電子エミッション測定摩擦装置の外観写真. 6分力計MCPTMPRPるためなどに使用されてきた.一方で近年,金型コーティングの一つであるDLC膜の摩擦中においてもそのような電子エミッションが観測されることが報告され(図2),薄膜コーティングの破壊現象の観測においても電子エミッションが活用されることが期待される7).一方で,薄膜コーティングの破壊靭性値と電子エミッションを関連付けた研究は現在までのところ実施されていない.そこで本研究では,薄膜コーティング破壊時に生じる電子エミッションを測定するという新しい装置の開発を実施し,将来的な破壊靭性値測定のための基礎的実験を実施する. 2.実験方法 2・1 摩擦しゅう動時の薄膜コーティング破壊による電子エミッション検出装置の開発 本研究では,薄膜コーティングが施された試験片に対して摩擦しゅう動を与えることによりコーティング表面に応力を発生させる破壊応力付加機構を構築した.コーティングに応力が与えられることで薄膜コーティングに亀裂の発生や進展が生じるが,その際に生じる電子エミッションをMCP(micro channel plate)装置を用いることで測定する機構を構築した.MCPは,表面にマクロスケールの微小穴が無数に空いている構造を有している.この微小穴の一つ一つの内面に高電圧を印加することで,電子が微小穴側面に衝突した場合に衝突した電子よりも多くの電子が側面から放出される.この電子の増倍が繰り返されることで微量の電子エミッションを観測可能にするものがMCP装置の概要である(図3).本研究では,増倍された電子がMCP装置に取り付けられた蛍光版に衝突する際に生じる発光を高感度カメラで捉えることで,摩擦時の応力に応じた電子エミッション放出量の測定を可能とした.電子エミッションは大気中分子と衝突することで消失するため,電子エミッションの計測系は1.3×10-4 Pa以下の高真空環境にする必要がある.従ってMPC装置や試験片は真空チャンバー内に配置されている(図4). 図3 MCP装置の概略. 摩擦しゅう動による応力付加機構の概要を図4に示す.薄膜コーティングに対する摩擦相手材には,曲率を有する試験片を用いる.この曲率を有する試験片は6分力計と直接接続されており,摩擦面に加わる垂直力としゅう動時に発生する水平力が測定される.試験片に加わる垂直力は6分力計の上方に存在するベローズを介してスライダーの押し付け力を調整することで制御する.コーティングされたフラット試験片は,ベローズを介して真空チャンバー外部に設置されたモーターとスライダーにより水平方向にしゅう動させられる.これらの機構を搭載した摩擦試験機を図5のように設計した.そして,実際に図6に示すように装置を完成させた. 高圧電源真空計カメラ試験片(コーティングされている)荷重スライダーリークバルブモーター− 189 −MCP
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