1.研究の目的と背景 環境負荷の低減やCO2排出の削減などの社会的な取り組みが行われている.輸送機器分野での取り組みでは,重量2.実験材料と実験方法キーワード:異種材料接合,半導体レーザ,熱可塑性エラストマーシート,陽極酸化,アルミニウム合金と燃費の間に強い相関があることから,車体の軽量化が進められている1).車体材料や構造設計の改良や材料の代替などを実現するためには,異なる材料を適切に使用するマルチマテリアル化が不可欠となっている.それに伴い異種材料の接合は,ますます重要な基盤技術となっている. 異種材料の接合では熱膨張係数,ヤング率,融点,熱伝導率などの物性差が著しく異なる場合,熱応力や残留応力の発生や長期的な継手の健全な維持などの問題が挙げられる.これまでに,樹脂と樹脂,樹脂とアルミニウム合金,チタン合金,ステンレス鋼などとの異種材料接合の報告が多数ある2-4).これらの多くは,被接合材同士を直接接合する接合方式であるため,接合加工中の加工安定性や材料物性差による上記のような問題が懸念される.一方,本研究では,それらの問題を緩和するために被接合材料の間にインサート材料を用いるレーザ接合技術を開発している5-7).本接合方法で使用するインサートシートは,接合品質を左右する重要な周辺要素技術となる. そこで本研究では,ポリアミド樹脂であるPA66とアルミニウム合金A5052の異種材料接合において,それらの中間に熱可塑性エラストマーシートを用いるレーザ接合技術の開発を行った.インサートシートの主要な目的は,接合界面での光吸収の調整ができることと接合時や接合後に発生する応力を緩和することである.ここでは,レーザ加熱による PA66 同士,PA66 と A5052 の異種接合の結果,また試作したインサートシートの接合性能をヒータ加熱による A5052 同士の接合から評価した結果について報告する. 2・1 実験材料 実験材料には接合材として,ポリアミド系樹脂PA66(100 mm x 20 mm,t1,t3)とA5052(100 mm x 20 mm, t2)を使用した.接合材料に供するA5052には,表面未処理の市販材料と陽極酸化処理の材料を用いた.陽極酸化処理を希硫酸溶液12%,1800 sから3600 sの時間範囲で行った. 本研究では樹脂とアルミニウム合金の接合にインサート材料を用いる接合方法を開発している.そこで,それら広島工業大学 機械システム工学科 (2018年度 一般研究開発助成 AF-2018210-B2)准教授 桑野 亮一 0.07% の接合用のインサートシートを試作した.主に接合界面での光吸収の調整ができることと接合時や接合後に発生する応力を緩和する機能を備えていることを目標とした.よ ってインサートシートについて,主成分として PA66 に熱可塑性エラストマーシートを 15%,PA6 を 10%混合して製作した.またカーボンブラックを 0 から 1%の範囲で 7 種類変化させて試作し,その外観を図1に示す.インサートシートは,カーボンブラックの濃度が増えるほど,黒い外観となった.また 7 種類ともそれらの厚みは 0.1 mm である.以後,インサートシートをCB シートと称す.2・2 接合方法 図2に半導体レーザを用いる接合方法について示す.材料をA:PA66,B:CBシート,C:A5052の順に重ねて,それらの中心線に沿ってレーザを材料A側から走査し照射した.レ ーザで接合加工中は,接合試験片をガラス板で固定し,土台に設けた空気圧シリンダを用いて加圧した.表1にレーザ照射条件を示す. を行った.まず設定温度を一定にしたヒータ上に材料を上からA,B,Cの順で重ねた.次に19.6 Nの重りで加圧し,その状態で300 s加圧し接合した.その後,重りを取り除き30 s空冷し室温に放置した.接合時の温度をCBシート部に熱電対を挿入し,285~300 ℃の温度条件のときに接合した. 2・3 異種接合後の評価 接合部材の評価は,引張せん断試験を行い,そのときの破断荷重 Nを測定した.破断後のA5052の接合部表面を光学顕微鏡で観察した.また陽極酸化後のA5052の表面形状の確認は,ショットキー電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子社 JSM-7200F)で観察した. CBシートの接合性能を評価する場合,接合熱量不足の影響を除くためにヒータによる加熱でA5052同士の接合図1 試作したインサートシートの外観0% 0.005 % 0.01% 0.5% 1.0% 0.02%− 159 −アルミニウム合金とポリアミド樹脂の中間にインサート材料を用いる異種材料のレーザ接合技術とその要素技術の開発
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