助成研究成果報告書Vol.34
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図4 各種金属試料に対する円偏光(上段),方位偏光(中断)および径偏光(下段)ビームを用いたNA =0.85でのシングルショットレーザー加工により得られた加工痕の電子顕微鏡写真.(a) 照射レーザー光の偏光状態および位相分布,(b) 焦点での集光スポットの計算結果,(c) – (g) 鏡面研磨された銅,アルミニウム,チタン,鉄(ステンレス鋼)の各種薄板およびシリコン基板に対するレーザー加工結果. 図5 銅表面に対するシングルショットレーザー加工での照射エネルギー依存性と加工痕断面における深さプロファイルの計測結果. なお,図4(a)で示している位相パターンは,図1(b)で検討した径偏光LG5,1ビームに相当する.図4(b)に示すように,このような位相分布を持つ径偏光ビームの集光では,中央に強度を持つスポット状となり,その周囲に複数のサイドローブを伴った強度分布となる.一方で,方位偏光の場合は,焦点中央での強度分布はゼロとなるドーナツ状強度分布を示す.また,円偏光の場合にもサイドローブを伴うスポット状の強度分布となる.円偏光ビームと径偏光ビームの集光を比べると,何れも中心部はスポット状の強度分布となる.しかしながら,両者の違いは,その中心のスポットが円偏光ビームでは面内方向電場(横電場)によって形成されているのに対して,径偏光ビームでは軸方向電場(縦電場)によって形成されている点にある. 円偏光ビームの照射(図4上段)では何れの材料に対しても,中央部のみがアブレーションされたスポット状の加工痕が得られた.前述したように,円偏光照射での理論的な集光スポットは,多重リング位相分布の付与のためにサイドローブを伴うが,横電場による鋭いスポット状の強度分布が中央に形成され,その集光スポット形状に従った加工痕が形成されている. 次に,方位偏光ビームの場合には(図4中段),全ての材料において,集光スポットのサイドローブの位置に対応したリング状加工痕が観察されることに加え,中央部にはピラー構造を伴うドーナツ状の加工痕が形成された.このことから,横方向電場のみ有する方位偏光ビームに対しては,材料に依存せず焦点での強度分布を反映した加工が得られることがわかった. これに対して,径偏光ビームを照射した場合(図4下段),チタンおよび鉄(ステンレス鋼)の薄板,シリコン基板については方位偏光と同様にドーナツ状の加工痕が照射部中央に形成された.一方で,銅およびアルミニウムについては,スポット状の加工痕が確認された.前項での検討結果から,径偏光ビームを金属表面に強く集光した場合の金属内部では,軸方向電場は強く減衰し,ドーナツ状の強度分布を持つ半径方向電場(横電場)が支配的となる.このような径偏光ビームの集光特性を踏まえると,チタン,鉄で観察されたドーナツ状の加工痕は妥当な結果であると考えられる.シリコン基板に対しても本結果と一致する同様の議論が既に報告されている8).一方で,アルミニウムおよび銅に対して得られたスポット状の加工痕は,前述の考察内容とは反するものであり,アブレーションプロセスに対する軸方向電場の寄与の可能性を示する結果といえる.これに加えて,軸方向電場の発生が無視できる開口数の低い集光条件(NA = 0.3)によって同様のシングルショット加工を銅表面に対して行ったところ,径偏光と方位偏光で明瞭な差異は観察されず,何れもドーナツ状の加工痕となることもわかった. 銅表面に対して径偏光ビームを強く集光した場合の加工特性についてより詳細に検討するため,加工痕形状についての照射エネルギー依存性を調査した.図5に,6重リング状の方位偏光および径偏光ビームを用いた銅表面に− 152 −

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