図12 ラメラ状構造の一例 にAl, Fe2O3とWC破片より構成された被膜が形成されることがわかった. 形成機構について以下のように考えられる. 衝突処理が長時間施された基板表面は転位密度の増加によって加工硬化が進行するにつれて表層部内の転位形成に対する抵抗が生じる. その結果, 基板表層部の延性が低下して, ショット衝突時に表面からアルミニウムの破片が飛び散って, 処理チャンバー内で粉砕され, Fe2O3粒子とともにショット表面に付着する. 図13 Al・Fe2O3・WC被膜に覆われたWCショットにより衝突処理した基板表面のSEM・EDS分析結果 ・ ショット衝撃による粒子の扁平化に伴うラメラ構造の・ 基板表面の粒子を起点として粒界に沿って進展した微構造の一例を図12に示す. ラメラ状構造の形成機構について調べた結果を以下に述べる. まず, A6061基板の衝突処理に使用されたWCショットの断面をFIB加工により作製して, SEM・EDSで分析を行った. その結果, 衝突処理を通してショットの表面上実験条件:A6061基板, 処理時間600秒 次に, 上記の被膜に覆われたWCショットを用い, A6061基板に衝突処理を600秒間施した後, 上述の通り実験試料の断面を作製しSEM/EDSにより観察・分析を実施した. その結果を図13に示す. 基板内にはラメラ構造を有する積層粒子およびWC–Coショットの破片が埋め込まれただけでなく, 基板そのものの上にもラメラが積層された. これは, ショットが基板に衝突した際にショット表面上の被膜が剥離して基板内へ移動したためと考えられる. またメカニカルアロイングにて報告されている通り6), 脆性が高いWC成分は扁平化することなく粒子のまま基板中あるいはラメラ中に閉塞される一方で, WCと比較すると延性が高いFe2O3成分はラメラとして扁平化されることが明らかになった. 1) コマロフ セルゲイ, 葛西栄輝, 齋藤文良, 加納純也, 2) Komarov S.V., Romankov S.E., Hayashi N., Kasai E. Surf. Coat. Tech., 204 (2010) 22152222 3) コマロフセルゲイ, 超音波TECHNO, 29 (2017) 612 4) Wright S.I, Nowell M.M, Lindeman S.P., et al. Ultramicroscopy, 159 (2015), pp. 8194. 5) Umemoto M., Todaka Y., Tsuchiya K. Mater. Trans., 44 (2003) 14881493 6) Benjamin, J.S, Volin, T.E. Metall. Trans, 5 (1974), pp. 19291934. 6.まとめ 謝 辞 参考文献 本プロジェクトでは, 申請者が以前提案した超音波振動援用メカニカルコーティング(UMCA)法を適用して超音波振動により加速されたショットを金属基板に衝突してプレコート粉末粒子を打ち込むことにより, 衝突エネルギーの低い条件ではコーティング層を, 衝突エネルギーの高い条件では複合層を形成することが可能であることを示した. 具体的には, 基板材料にアルミニウム合金を, 粉末材料にTiN, TiB2, Fe2O3をそれぞれ選択してZrO2ショットまたはWCショットを利用した衝突処理を施し, SEM・STEM・EDS・EBSD・ナノインデンテーション試験を用いて試料断面の評価を行った. その結果, ショット衝突処理を通して基板表層部の結晶粒は微細化されながら基板内に粉末粒子が分散して微小硬さが著しく増加した. さらに詳細な調査では, 結晶粒の微細化過程において転位・結晶粒界が活動したこと, 基板内にラメラ構造を有する粒子が埋め込まれたこと, そして粉末粒子は微小亀裂を伴いつつ粒界に沿って移動したことが判明した. また追加実験では粉末粒子が基板の結晶粒微細化を促進させることや, ラメラ構造はWC-Coショット表面にも形成されており表面改質処理中にラメラはショットから基板へ移動されることも明らかになった. この結果を踏まえて, UMCA法では以下に示す3つの現象を通して複合層が形成されたと結論付けた. 本研究は新規性や創造性などの観点から総合的に評価した結果, 次のような現象を初めて見出した. ・ ひずみの蓄積に伴い生じた転位の再配列による結晶粒の細分化 形成とラメラの基板への移動 小亀裂への粒子の入り込み 本研究制度を活用させて頂いたことを,この場を借りて厚く御礼申し上げる. 林直人 特許第4892722号, 2012.01.06 − 143 −
元のページ ../index.html#145