図10 UMCA法処理したA6061基板表層部のKAM 図9 高倍率で取得した5分間UMCA処理後のA6061す. 結晶方位はAlがとるfcc構造の逆極点図に基づき色付けされており, 破線は基板の表面を表している. 図9ではFe2O3粒子とAl母材の亜結晶粒(subgrain)を明確に区別できる. Fe2O3粒子は実線にて囲まれており, 粒子内にて 図11 UMCA法により5分間処理したA6061基板表基板表層部のIQマップ 算出された結晶方位には規則性がなかった. 一方でAlの亜結晶粒内では同一の結晶方位が算出された. 亜結晶粒の色彩は基板表面のごく近傍において青色を基調として類似していることから, ショット衝撃処理により亜結晶粒は表面近傍にて[111]方向に優先的に配向したと判断できる. 亜結晶粒における色彩の類似は図9中央部においても確認でき, 当該領域ではピンク色すなわち[113]方向への優先的な配向がみられた. また亜結晶粒の形状に注目すると, 長方形だけでなく等軸のものも観察された. 等軸の亜結晶粒は表面ごく近傍にて多くなる傾向があり, その一辺の長さは約150 nmであった. 5・2 粉末粒子の基板表層部への移動機構 UMCA法において基板表層部における複合層の形成は粉末粒子がショット衝突の影響を受けて, 表層部内に移動されるため進行する. したがって, 粒子の移動機構を解明することが重要である. そのためには, 表層部内の転位挙動について調査を行い, その結果について図10に示す局所方位差(KAM)マップを用いて概説する. 図10には色彩は結晶方位差の増加に伴い青色(0°)から緑色・黄色・橙色そして赤色(5°以上)へと遷移する. ショット衝突によって基板表層部に局所的な塑性変形が誘起され, それが可動転位密度の増加をもたらす. 衝突処理を継続すると, 転位の移動・蓄積が促進され, 図10(b)の実線四角内に示す高密度転位壁と転位セルが形成される. 塑性変形がさらに進むと転位セルがマイクロバンドおよびブロック状の亜結晶粒に変化し, それによって組織微細化が進行する. また, 図10(a)に示す通り, 表層部内に撃ち込まれたFe2O3粒子(赤色)の表面近傍では粒子とAl母相の体積弾性係数が大きく異なるため, 高密度転位(緑色)マップ 層部の断面のADF STEM像 が発生・蓄積しやすくなっている. その結果, 粒子近傍には, 第一に, 組織微細化が早期に進み, 第二に, 応力が降伏値を超えると塑性変形がすべり面に沿って発生し, 粒子が表層部からバルクへ移動される. また, 粒子近傍で応力集中により亀裂が発生し, 粒界に沿って進展するため粒子が隣接結晶粒の回転により基板内部へ入り込む. 亀裂についてSTEMにより調べて, 粒径100nm以上の場合に発生が特に観察された. その代表的な観察結果を図11に示す. この図には, 白球状粒子は電子エネルギー損失分光法(EELS)による面分析の結果, Fe2O3であることが判明した. なおFe2O3粒子の周囲にみられた暗い領域は電子線が回折しなかった箇所であるため, 真空領域すなわち空孔欠陥やナノ空隙だと考えられる. このことから, Fe2O3粒子はショット衝突によりナノ空隙を伴いながら機械的に基板に埋め込まれたと推測される. しかし, 粒子近傍に空隙が観察されなかった場所もあり, おそらくショット衝突によるひずみの増加によって空隙が閉塞されたためと考えられる. しかし, それを証明するためには, さらなる調査が必要である. 5・3 ラメラ状構造の形成機構 上述したように, 衝突処理時間が長くなると基板表面上にラメラ状構造が形成される傾向がある. このような− 142 −
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