図7から明らかなように, 衝突処理により基板内に結晶粒界が導入される. 未処理の状態では基板内の粒界の多くが大角粒界であり小角粒界はほとんど存在しない. このときの結晶粒径は数十 µm程度である. ショット衝突処理を60秒間基板に加えることにより, 基板内には小角粒界が形成されるが, 粒界は結晶粒を細分化するには至っておらず, 表面近傍を除く領域では処理前の結晶粒の形状を推測できる. それに対し処理時間を延長すると新たに形成された大角粒界が結晶粒を細分化することにより, バルク内部の結晶粒も微細化され, 粒界の長さは5 µm程度まで短くなったことが確認された. 図8は超音波ショットピーニング(USSP)(a)およびUMCA法(b)を利用したA6061基板表層部のIPFマップである. 破線は基板の表面を表す. USSP加工後の試料のIPFマップでは結晶粒内に亜粒界が形成されているものの, 基板表面近傍であっても結晶粒の形状は判別できた. その一方で, UMCA法を施した試料のIPFマップでは基図6 異なる処理時間で得られたA1050基板表層部 図7 異なる処理時間で得られたA6061基板表層部の図8 USSP法(a)とUMCA法(b)により処理したIQマップ タのみを取得した. またCI値が0.1未満となる信頼性の低い測定点は, Grain dilationと呼ばれる操作により隣接測定点が所属する結晶粒の一部に置き換えられた. 表層部における組織がショット衝突加工によって微細化されることは古くから知られており, ショットピーニング加工5)に関する分野では研究の対象になっている. しかし, UMCA法処理により粉末粒子が基板に表層部内に打ち込まれる際に表層部組織の微細化が一層進むことは本研究で初めて見出した. これについてより詳しく調べた結果は以下に紹介する. 板表面から20 µm程度の深さの範囲にて結晶粒は判別できないほど微細化されている. それによって表面近傍での微小硬さは無処理で2000 N/mm2, 600秒処理後で6300 N/mm2に増加した. この原因がFe2O3粒子の存在によるAl母材結晶粒の微細化であることを検証するために同一の観察領域にて高倍率で取得したIPFマップを図9に示A6061基板表層部のIQマップ の順に小さくなる傾向がみられる. この領域の下に等軸晶領域が観察されるが, 粒径は処理10分間後で最も小さくなっている. この結果は, 図4に示されている結果と相の逆極点図(IPF)マップ 関している. つまり, 衝突処理の時間が10分を超えると組織微細化の進行が停滞するだけではなく, 図6(c)に示すように組織が粗大化することもある. 一方, 組織微細化は処理時間が10分間以内の場合, 処理時間とともに著しく進むことが確認された. 図7はFe2O3粉末粒子を利用した衝突処理後のA6061基板表層部のSEM像における菊池線の鮮明度を表したIQ(Image quality)マップである. 破線は基板の表面を表す. 赤い実線は大角粒界を表しており, 大角粒界を挟んで隣り合う測定点の結晶方位差は15°以上である. 一方で青い実線は小角粒界を表しており, ここでは隣接測定点の結晶方位差を5°以上15°未満であるとして定義している. また黒い領域における隣接測定点の結晶方位差は5°未満である. 結晶方位の解析にあたり結晶粒界を明瞭に描画するため, これらのIQマップにはクリーンアップ処理を実施した. 特に, CI(Confidence Index)値4)が0.1以上となる測定点のデー− 141 −
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