図4 A1050基板試料断面のSEM像 処理条件:室温; 時間 (a) 10分, (c) 30分 図5 異なる時間で室温において処理されたA6061基25 100 200 20 7 13 11 30 20 24 26 60 28 32 45 A6061基板試料を用いた実験においても似たような傾向が見られた. 図5は無処理試料(a)と1~10分処理時間(b~d)にて衝突処理が施されたA6061基板の表層部における断面SEM像である. 処理時間1分の試料ではFe2O3粉末はコーティング層として基板表面に堆積した. 内部のブロック状の粒子は, 図5(a)に示すように, 6000系合金に最初から存在するAl-Fe-Si-(Mg)系の析出物である. しかし処理時間5分の試料では, Fe2O3粒子はすべて基板表層部内に分散するようになり基板表面への粒子の堆積は全く見られていない. このとき粒子の一部は図5(c)にみられるように特定の方向に沿いながら直線状に分布している. その一方で処理時間を10 分に延長したところ, 基板表層部内におけるFe2O3粒子の分散形態は無秩序となった. この結果より, 衝突エネルギーが高い条件では粉末粒子の分散度は処理時間の増加に伴い向上すると結論付けられる. 処理時間5分以上の場合, 酸化鉄およびWCからなるラメラ状構造が形成される. なおこの現象はA1050基板の衝突処理においても確認されている. その機構については下述する. また, WCショットは使用時間が長くなるにしたがって部分的に破壊して破片が生じる. その一部は処理チャンバー内で粉砕されて, 衝突の際に基板表層部に打ち込まれる. この現象を利用すれば, 粉末粒子を使わずに複合層の分散相としてショットの素材を用いて複合層の創製が可能であることがわかった. 5.複合層の形成機構 トが大きく異なるため金属母相の塑性挙動を追跡するトレーサとして適切である. 上記の実験条件では処理期間が10分間ほど短い時間でも複合層が形成できることが確認された. 実験結果を以下に概説する. まず, A1050基板を用いた実験で衝突処理を10~30分間施した結果, Fe2O3粒子が基板内に打ち込まれ, 図4に示すように基板表面から10 µm以上の深さに入り込んだことがわかった. ただし, 粒子の分散形態を比較して10分以上処理では分散形態に大きな変化はなく, さらに粒子凝集化と母相内亀裂発生が見られたため, 複合化処理の時間は10分間で十分であることが明らかになった. 以上より, ショットの運動エネルギーを上げることにより複合層の形成が進行することが明らかになった. 複合化に影響を与える現象は少なくとも2つある. 以下にそれぞれについて説明する. 5・1 基板表層部のナノ構造化 EBSD解析によるとショット衝突処理により基板内には結晶粒界が導入されることで表層部の微細化が進行する. 図6は異なる処理時間で諸突処理を施したA1050基板の表層部における結晶方位を示した逆拠点図マップ(Inverse pole figure map, IPF map)である. 太い破線は基板の表面を表す. 図6に示されるように基板表面の近傍では結晶粒が判別できないほど微細な結晶粒領域が存在している. この領域の深さは処理時間10分, 20分, 30分 を高くすると, 処理時間10~20分間では粒子の入り込み現象が見られなかったが, 処理時間30分以上では粒子がより基板内部に入り込むようになり, 入り込みの深さは温度が高いほど大きくなった. しかし, 粒子同士の分散状態はあまり変わらなかった. 代表的なSEM画像と粒子入り込みの最大深さを以下の図3(a~e)と表2に示す. また, 粒子が基板内部に入り込むと基板表層部内の結晶粒微細化がショットピーニングのみの場合に比べて促進されることが明らかになった. これについては追って説明する. 表2 粒子入り込みの最大深さm 10 基板温度℃ / 処理時間 分 6 14 9 4・2 高エネルギー衝突処理における複合層の形成 次に, ZrO2ショットを高密度のWCショットに置き換えて, 距離hを17mmまで下げて, 振動振幅Abを77m(p-p)まで上げることにより衝突エネルギーを1780 Jsec-1m-2まで高めた条件でFe2O3粒子を用いて実験を行った. 本実験では粉末材としてFe2O3粒子を用いた理由は以下の通りである. Fe2O3粒子は複合層内の分散材でありながら, SEM・TEM観察の際に基板との像コントラス板表層部の断面のSEM像 − 140 −
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