図1 ブースター内部における縦方向応力Pa (a)と縦キーワード:表面複合化処理,超音波振動,ショット衝突, ナノ構造化, 複合化機構 最も重要な要素であり, さらには, 表面改質によって金属製品に新しい機能を付与することができる.特に, 性質が大きく異なる構造材料を, 適材適所で組み合わせて総合的に優れた特性を有する部材や製品を作り出すマルチマテリアル化という設計コンセプトにおいては「表面特性」と「異種材料接合強度」が最重要視されている. そのような背景のもと, これまで開発・実用化されてきためっき, 溶射, 蒸着, 皮膜コーティングなどの被覆手段を適用し, 金属表面の改質により金属製品のさらなる高機能化および異種材料接合技術の高性能化を目指し, 多くの研究がなされてきた. しかし, これらの手法の適用範囲には限界があり, 十分な成果が上がっていない. その主要因は, 接触界面を構成する材料の相性が悪いことにある. その理由は以下のとおりである. 1)多くの金属の表面に自然酸化膜が形成されるため, 金属表面の被覆処理では金属と被覆剤, 異種金属溶接・接合では金属同士が直接接触しにくくなる 2)物理化学的な特性の差が大きい金属と非金属, 特にセラミックスの間に化学結合が形成されないため, 金属基盤と非金属被覆剤との組み合わせに限界があり, 高温条件でも良好な皮膜の密着性は得られない 3)密着性・接合性を高めるために温度を上昇させると金属/非金属の界面では熱膨張係数が大きく異なるため冷却時に熱応力が発生し, 皮膜剥離が生じる恐れがある.また,異種金属の界面では脆い金属間化合物が生成・成長するため溶接・接合の強度が低下する. 以上の背景を踏まえ本研究では, 金属表面の2次元的な塑性加工という新たな概念を提案して, 加工装置の設計・開発を行い, 金属表層内に異種材料・異種金属の粒子を分散した複合層を合成する環境調和型プロセスを確立し, 金属成膜加工・異種材料接合の設計の自由度を高めることを目的とする. 具体的には, 著者が以前提案した超音波振動援用ショット衝撃処理法(UMCA: Ultrasonic Mechanical Coating and Armoring)1),2)を適用し, ショット衝突により金属表層部内に塑性流動を引き起こすプロセスを構築する. また, 塑性流動の生成機構を解明しながら, 処理条件の最適化を行い,塑性流動によって粒子含有の複合傾斜層が形成することができる新規表面改質技術を開発し, 塑性加工の適用範囲の拡大へと繋げる. 方向変位振幅m (b)の分布 1.研究の目的と背景 金属表面は, 金属マトリックスの性質を維持する上で(2018年度 一般研究開発助成 AF-2018025-B2) 東北大学 工学研究科 教授 コマロフ セルゲイ 2.金属表面加工装置の設計・作製 Japan)により振動周波数と先端振動振幅の測定を行った. 測定結果に基づいて, 本研究では周波数fが1970019800Hz, 振動振幅Abが5080m (p-p)の条件で実験を行った. また, 音響流 (Acoustic Streaming)と音響放射圧について以下に概説する. 本研究で提案したプロセスは, ショットピーニング, ボールミル粉砕, 音響流・音響放射圧の3種類の効果を利用したものである. これらすべての処理を1つの処理ユニットで同時実行するために, 特殊な処理チャンバーの設計・作製を行った. このチャンバーの主要部分は超音波ブースターである. 処理中で目的とするショットピーニングとボールミル粉砕効果を得るには, ブースター先端の振動振幅が60m(p-p)以上の条件で処理を実施する必要がある. しかし市販の超音波装置を用いる際の最大振幅が20m(p-p)を超えない. そのため, 最初にANSYSソフトウェアを適用して, 振動振幅の増幅率が高いダンベル状ブースターの設計を行い, チタン合金で製作した. 設計の詳細に関しては申請者の出版済みの論文3)を参照頂きたい. 図1にANSYS解析結果の一例としてブースター内部における縦方向応力(a)と縦方向変位振幅(b)の分布を示す. 製作したブースターは本研究に用いた超音波発生装置(UIP1000hd, Hielscher, Germany)の圧電式振動子に取り付けて, レーザ変位計(LK-H028, Keyence, − 138 −金属表層内部の塑性流動を利用した表面改質処理法の開発
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