助成研究成果報告書Vol.34
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3・5まとめ構築したモデルを用いて,実験で得られたエポキシ樹脂の応力-ひずみ曲線を精度よく表現できることを確認した.次に,成形解析とRVE解析を連携させることで,CFRP板材の成形性をマルチスケール的に分析する手順を提示した.さらに,構築したモデルと解析手順を用いて,CFRP板材の高温での成形性が向上するメカニズムを説明した.また,本モデルを用いたシミュレーションにより,温度とエポキシ樹脂の初期架橋密度がCFRPシートの成形性に及ぼす影響を考察した.軽量かつ高い強度を有する構造部材の開発は常に追求されている課題である.近年,積層造形手法は試作を超えて実製品の生産の段階まで実用性が広がっている.積層造形手法は複雑な対象物を直接造形できるという利点を有しており,階層性を有する構造も製造可能である.しかし,材料および構造物の階層性を考慮した設計手法については現在もなお確立されていない.ゆえに階層的な材料および構造物の最適設計手法の構築が求められる.Wuらは階層性ラティス構造を導入し,密度を変化させたラティス構造でグレイスケール要素を表現した6).この手法によりトポロジー最適化の結果をより正確に反映することができるようになり,さらに,トポロジー最適化の対象が設計領域の外形だけでなく,内部構造にまで及ぶようになった.本研究ではボイドを含む材料の力学挙動を考慮し,それを外的形状と内部構造に反映させるデザイン方法を検討した7).提案手法の概要図を図12に示す.ここでは,材料・構造最適化問題に対してボイドの存在を考慮できるGTNモデルを適用することで有効ボイド率f∗の概念が導入される.GTNモデルにおける初期ボイド率f0に対して,新たな変数として球状ボイド半径riを与える.こうすることで球状ボイド半径が最適化変数として扱えるようになる.またそのriに応じた力学特性としてGTNモデルで定義される降伏応力以外にも有効ヤング率Ei∗を定義する.すなわち,riを介して表現される初期ボイド率f0によって材料の剛性と降伏応力を表現できるようになる.実際の製造実験の際には,球状ボイド半径の値に対してある閾値を設けて段階に分けた球状ボイド半径を設定して製造を行った.4・2提案手法の適用実験得られた最適化結果のモデルを3Dプリンター(AXIOM DUALExtruder)により造形し,それらに対して3点曲げ試験を行うことで強度を比較した.その際,構造物内部に作成した球状ボイドの造形精度をX線CTスキャン(XDimensus 300)により確認した.図13より,内部に球状ボイドが造形されていることがわかる.次に作成した試験片と治具により3点曲げ試験を実行した.荷重は1mm/minの等速制御で与えた.2種類の試験片の破断の様子を図14に示す.また,全パターンの荷重-変位曲線を図15に示す.4.ボイドモデルを用いた階層的構造デザイン手法4・1概要図10に局所座標系で表されるせん断応力成分と等二軸引張時の引張ひずみの関係を示す.比較のために,室温(20℃)と高温(60℃,80℃,100℃)の各温度の応力-ひずみ曲線を樹脂の特性に適用した.室温の場合と高温の場合では明らかな差が見られた.室温の場合,高温の場合に比べてせん断応力の増加率が大きくなっていた.この結果は,加熱されることで樹脂が軟化して繊維が移動しやすくなることで繊維への作用応力が低下し,その結果として成形性が向上しうることを示唆している.図11は,樹脂に蓄えられたひずみエネルギーと二軸引張ひずみとの関係を示すグラフである.60℃で成形した場合は,80℃や100℃で成形した場合よりも大きなエネルギーを必要とすることがわかる.この結果は,加熱されることで樹脂が軟化し,変形を継続するのに必要なエネルギーが減少することからも納得できる結果である.図10温度ごとのせん断応力成分の変化図11温度ごとのひずみエネルギーの変化図9繊維/樹脂RVE− 136 −

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