図5 Lankford値の予測結果の確認びA6061アルミニウム合金板の仮想材料構築を行なった.これらに対して面内引張り試験で得られた結果を用いて図6 応力ひずみ曲線の計算結果と実験の比較図7 応力ひずみ曲線の予測結果と実験の比較2・2数値材料試験法の構築先端材料の複雑な変形挙動をシミュレーションで予測するためには,高度な材料モデルの適用が不可欠である.特に,板材成形における異方性や複合硬化を適切に表現することは困難であり,材料モデル中には複数の決定困難な材料パラメータが含まれていることが多い.ゆえに要求される材料試験の負担増大も解決すべき問題である.そのため,簡易な材料試験と数値シミュレーションを融合した数値材料試験法の確立が急務であると考えられる.構築した数値材料試験法の概要を簡潔に説明する.材料の巨視的特性のうち,変形異方性はLankford値によって評価され,応力異方性は圧延方向(Rolling Direction, RD)と圧延横断方向(Transverse Direction, TD)の単軸引張試験における応力-ひずみ関係を用いて評価される.これらはオーダーの全く異なる数値であり,また物理的な意味合いでも一つの式で同時に評価・最適化を行うことは困難である.そこで,変形異方性と応力異方性の同時最適化手法として新たな手法を考案した.すなわち,Lankford 値を評価関数として結晶方位の学習を行うプロセスと,応力-ひずみ関係を評価関数としてすべり系硬化則の学習を行うプロセスを用意し,両者を交互に繰り返すことで最終的にすべてのパラメータが最適化されることを狙いとした.最適化過程として様々な手法を検討したが,遺伝的アルゴリズムに基づく手法と進化戦略および深層学習を用いた手法などにおいて効果が認められた.まず,fcc材料への適用性を検証するため,A1145およ材料学習を行い,仮想材料が入力値を正しく出力できるかどうかを確認した.例としてA1145について,Lankford値の実験値と計算値の比較を図5に,RD・TDの応力–ひずみ関係の実験値と計算値の比較を図6に示す.いずれについても計算値と実験値がよく一致しており,パラメータ学習の過程によって仮想材料モデルが実材料の二種の異方性を同時に再現できていることがわかった.次に,決定された学習パラメータを用いて,多軸応力下での塑性変形応答の予測を行なった.図7は等二軸および平面ひずみ状態における実験値とシミュレーション結果を比較したものである.未学習データである等ひずみ引張および平面ひずみ引張のいずれについても,単軸引張試験から得られるデータのみを元に学習した仮想材料モデルが,実験値と近い値を算出していることが確認できる.応力ひずみ曲線の序盤または後半で誤差が拡大する場合があったが,誤差の主因は硬化則に用いる近似式の形式に依存することがわかっているので,今後手法の改善を行う.また,hcp材料としてAZ31Bマグネシウム合金を用いた検討も行なっている.FEPMに双晶モデルを組み込み,最適化手法を工夫することによって,良好な予測結果が得られている4).2・3材料モデル研究に関する研究のまとめ任意の2次負荷経路をとる材料の加工硬化を表現できるモデルを構築した.結晶塑性モデルを用いた検討により妥当な予測結果を示したので,提案モデルの有効性が確認された.今後は結晶塑性モデルに転位密度等のパラメータを導入して材料組織情報との関連付けを行うことや,成形シミュレーションにも活用できるような巨視モデルへの導入等の展開が考えられる.また,数値材料試験については,fcc材料とhcp材料については実験データを用いた検討により,提案手法の有効性は示されている.一方で,一部の実験的検討が不十分であったため,継続して課題に取り組む必要がある.今後はbcc材料への適用や,学習効率の向上などの課題に取り組む.このように,当初の計画は概ね達成され,見るべき成果が得られた.さらに,検討すべき重要な課題も複数発見されており,今後進展させる必要がある.− 134 −
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