助成研究成果報告書Vol.34
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キーワード:塑性力学,成形シミュレーション,材料モデル,結晶塑性,CFRP,3Dプリンタ (2) セル組織構造の塑性変形モデリングを行う.これは生物や植物を構成する材料に見られる微視的階層構を計画することが当然となっていると同時に,開発期間短縮化やコストダウンへの圧力は依然として強いため,設計・加工・生産の困難さが増している.材料の観点からは,一層の高強度化と軽量化の同時達成を目的として高張力鋼板やアルミニウム合金に代表される軽金属類の適用が拡大している.これらは一般に難成形または成形予測困難であり,変形理論や解析技術の研究が盛んに行われている.また,CFRP等の複合材料の変形加工も注目されつつある.技術の観点からは,サーボプレスやホットプレスによる難成形材の成形性向上の試みや,Additive Manufacturing (AM)による複雑形状成形の実現,またはネットワークやデジタル技術の適用によるIoT化が進められている.このように,社会・材料・加工技術・IoT化の側面からの刺激を受け,塑性加工の果たす役割への期待が急激に高まっている.しかし,これらの日進月歩の進化に比較して,基盤となるべき基礎理論の発展が追いついておらず,近い将来これら新技術の進展の妨げになる可能性がある.ゆえに,材料の塑性を最大限活用できるようにするための研究の拡充が必要である. 以上のような社会背景を念頭に,本研究課題では次の2つのテーマを設定し,研究に取り組んだ. (1) 塑性理論の適用範囲拡大と物理的解像度の向上を目指す.特に予測困難な材料の成形限界近傍における変形場の高精度予測を狙う.そのために,任意の負荷経路後の材料の加工硬化を予測するためのモデルと,高度な材料モデルを活用しやすくするための数値材料試験法についての検討を行う.また代表的な複合材料であるCFRP板材のプレス成形への適用を検討するためのモデル化を行う. 造であり,一般の構造材には見られない不均一性や異方性を積極活用することで極限的軽量化を達成するための鍵になる概念である.近年ではAMによってこれらの構造を有する物体を作製することが可能になりつつあるが,その変形予測は十分進んでおらず,所望の巨視的機械特性を実現するためのデザイン手法は確立していない.本項目では,材料の微細構造を考慮できるデザイン手法確立のための基礎的検討を行う. 1.研究の背景と目的 環境保護,省エネ,省資源化などの観点からものづくり慶應義塾大学理工学部 システムデザイン工学科 (2018年度 一般研究開発助成 AF-2018024-B2) 専任講師 大家 哲朗 2.成形シミュレーション高度化のための塑性理論 2・1 一般負荷経路における加工硬化挙動の予測 材料が複雑な変形履歴を経て加工されるとき,特に1次変形と2次以降の加工プロセスにおいて変形形態が異なるとき,その変形形状や加工硬化状態は予測が困難である.このような難易度の高い材料加工を成功させるためには,成形解析による事前の試行錯誤が重要である.そのため,変形シミュレーションの精度を向上させるための材料モデルの重要性が高まっている.そこでは単調負荷のみならず,反転負荷(バウシンガー効果)や交差硬化を含む複合的な加工履歴を精度よくモデル化することが必要である.バウシンガー効果を含む複合的な加工履歴のモデル化に関して,これまでに種々の材料モデルが提案されている.特にバウシンガー効果の表現としては移動硬化モデルが用いられることが多い.移動硬化則は,降伏曲面の大きさは変化させずに,その中心が背応力によって応力平面上を移動することにより材料硬化を表現するモデルであり,様々なモデルが提案されている.これらのモデルにより,複合的な加工履歴の予測精度は高まっているが,パラメーターの数の増加による材料試験の負担増加や,材料微細構造の考慮が不十分であるなどの問題もある.我々はこれまでに材料微視的構造に基づく複合異方硬化表現の確立を目的とした検討を行ってきている.本報告では,提案モデルの概要および有限要素多結晶モデル(FEPM)1)による解析的検討事例2)について説明する. 提案モデルの概略を示す.前負荷経路に対する再負荷経路は1次負荷偏差応力テンソルと2次負荷偏差応力の間のなす角αで表す. デルの対象とする反転負荷経路であるが,その間の任意の方向の再負荷経路における加工硬化曲線を で表すことにする.仮に式(2)のような表現式が確立できれば,バウシンガー曲線と交差硬化曲線のみを実験で求めることで,その間のすべての一般再負荷経路上の加工硬化曲線を予測することができる.バウシンガー効果は活動す(1) (2) − 132 −新技術・新素材の利用拡大を支援するための塑性力学理論の構築 𝛼𝛼= 0,π/2,πはそれぞれ前負荷の継続,直交再負荷(交差硬化曲線) 𝐻𝐻!(∫𝑑𝑑𝜀𝜀")および逆方向再負荷(バウシンガー曲線) 𝐻𝐻#(∫𝑑𝑑𝜀𝜀")に対応する.ゆえにπ/2 ≤ α≤ πが本モ𝐻𝐻!"#dε";α(=𝐻𝐻#sin$α+𝐻𝐻%cos$α, 2π2<α<π6 cosα=𝛔𝛔!" ∶ 𝛔𝛔#"$%𝛔𝛔!"%$%𝛔𝛔#"%$ .

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