助成研究成果報告書Vol.34
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4.PLA針の人工皮膚に対する穿刺実験 4・1 実験装置と方法 実験装置の全体像を図5に示す.ロードセル(テック技販 TGRV02-2NB)にゴム製の人工皮膚を取り付け,吸着 に示す.本デバイスは,PLA針を直径1 mmのガラスキャピラリーに接続したものを組み込むことができるようになっており,ステッピングモータの回転をカップリングで伝えることで,回転動作が可能になっている.ステッピングモータはArduinoにより回転数および回転角の制御が可能である.また,ガラスキャピラリーは流体カップリングでデバイス側面のパイプと接続されており,このパイプをポンプと接続することで,液体の吸引が可能である.デバイスの設計・作製は協力関係にある精密機器メーカとディスカッションし寸法等を決定し,同社に加工を依頼した. 治具で吸着し,電動スライダー(THK KR30)で針を1.5 mm穿刺し元の位置に戻す際の穿刺抵抗力を測定し,たわみの様子を実体顕微鏡(Nikon SMZ800N)で観察した.画像はデジタルカメラ(Sony α7)で撮像した. 人工皮膚としてPolydimethylsiloxane(PDMS,シリコーンゴムの一種)を用い,主剤と硬化剤の割合を30:1の比率で混合して,ヤング率を人間と同程度の0.4 MPaに調整した.また,使用した針は長さ2 mmのPLA針である.以上の装置を用いて以下の方法により実験を行った. ①吸着治具をPDMSに吸着し,ロードセルを校正する. ②電動スライダーに穿刺デバイスを固定し,0.1 mm/sの速度でPDMSに向かって1.5 mm動かし,穿刺後逆方向に0.1 mm/sの速さで1.5 mm動かして初期位置に戻す. 以上の所作を回転あり,回転なしの2条件について行う.その際のロードセルからの抵抗値の時間推移を記録した.また穿刺の様子をデジタルカメラで動画撮影した. 4・2 結果 各条件において5回のデータの平均をとった穿刺抵抗力の推移を図6に示す.たわみの様子を図7に示す.回転なしの場合の最大穿刺抵抗力は9.3 gfであったのに対して,回転ありの場合のそれは7.3 gfであり,20 %ほどの低減が見られた. たわみに関しては,2条件どちらの場合でも最大0.7 mm程度であった.しかしながら,回転なしの場合広範囲がたわんでいるのに対して,回転ありの場合は針の近傍部分しかたわんでいないことが確認された.蚊が穿刺した際には,たわみはほとんど発生しない.これは,蚊が下唇と呼ばれる部位で皮膚に張力をかけているためではないかと考えている. 5.皮膚のたわみを抑える吸着治具 現在,上記下唇のメカニズムを解明中であり,FEM解析を用いた穿刺抵抗力のシミュレーションを行っている7).穿刺対象の上面にたわみ防止シートを設け,穿刺対象と完全固着状態とし穿刺対象をたわまなくした場合,穿刺抵抗力が低下する結果が報告されている8)9).このことから,実体顕微鏡 ロードセル グリッパー 1 mm (a) 回転なし 皮膚吸着面 皮膚のたわみを抑制することで痛み低減につながると考え,皮膚を吸着しながら穿刺することができる吸着治具を作製した. 作製した吸着治具を図8に示す.吸着治具は3Dプリンターを用いて描画した後,上面をガラス板にして針の様子が観察できる構造になっている.治具下部に接続されているシリコンチューブでダイヤフラムポンプ(ASONE, GM-20D)から内部を真空吸引して,皮膚を引っ張ることが可能である.この治具を皮膚に押し当てた状態で,穿刺デPDMS 吸着治具 図5 実験装置 図6 穿刺距離に対する穿刺抵抗力 1 mm 図7 たわみの様子 真空チャンバ 吸引チューブ 図8 吸着治具 針 電動スライダー (b) 回転あり 10 mm − 119 −

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