キーワード:化学気相成長,硬質膜,ハードコーティング,TiBCN,プラズマ 3.2 TiCN成膜における流量比r の影響 Si(CH3)4は常温で液体であるため、TiCl4は55ºCでH2バブリングし、Si(CH3)4は30℃に保温し、気化ガスを反応器内に供給した。反応器内の全圧を1.0 Torrに調節し、550ºCに加熱したSi, WC-Co基板上に成膜した。H2総流量は500 sccmとした。膜の化学結合状態をX線光電子分光 (XPS)、結晶性をX線回折 (XRD)、成膜速度を段差膜厚計、硬度をダイナミック微小硬度計で評価した。 3.結果と考察 3.1 TiCN成膜における全圧の影響 いられる切削工具や金型が非常に重要な役割を果たしている。これらの硬度や耐摩耗性、耐熱性などを改善するためにTi系硬質膜のコーティングを施されることが多い1)。 代表的な硬質膜にはTiC(ビッカース硬度: 3000~4000, 摩擦係数: 0.25)や、酸化温度が550℃と高いTiN, それらを複合したTiCNなどが用いられている。中でもSiを添加したTiSiCNはTiCやTiNの特性を併せ持ち、耐酸化性にも優れるため、近年注目されている。その中でもTiCNは硬度の優れたTiCと耐摩耗性の優れたTiNの両方の特性を有しておりコーティング膜として広く適用されている2)。 このような硬質膜は、物理気相成長(PVD)法や化学気相成長(CVD)法で成膜される。CVD法は均一性や密着性などの優位性があるが、高い処理温度(900 ~ 1000℃)による母材の変形や長い処理時間などの問題がある3)。 そこで、本研究ではCVD法の中でも低温処理(~ 600℃)可能なプラズマCVD法を用いた。また、CVD法によるTiCN成膜ではTi源として安価なTiCl4が広く用いられるが、成膜温度が500℃程度と高く、腐食性がある4)。そこで、TiCl4の代わりにTi[N(CH3)2]4 (TDMAT)が検討されている。TiCNの成膜温度は250 ~ 500℃と低く5)、TDMATの含有成分には腐食性はなく、CとNはTiCN膜の成分となる6)。本研究ではTi源にTDMATを用いてプラズマCVD法でTiCN膜を作製し、組成や構造などを調べた。 2.実験方法 2.1 有機チタン源を用いた成膜 Ti源およびC源はTDMAT、N源はN2 を用いた。TDMATは常温で液体であるため、110ºCでH2バブリングして反応器内に流量3.27 sccmで供給した。H2総流量は300 sccmにして、Si、 WC-Coを基板に用いた。流量比r = (N2流量) / (TDMAT流量)と定義して、全圧を1.5 ~ 4.0 Torr、流量比rを0 ~ 10と変化させた。膜の化学結合状態をX線光電子分光 (XPS)、結晶性をX線回折 (XRD)、成膜速度を段差膜厚計、硬度をダイナミック微小硬度計(25 gf)で評価した。 2.2 チタン系硬質膜へのシリコン添加 Ti源、Si, C源、N源はそれぞれTiCl4 (3.27 sccm), Si(CH3)4 (3.3 sccm,6.6 sccm), N2 (0~16.9 sccm)を用いた。TiCl4, 1.研究の目的と背景 自動車部品や電子部品などを高速・大量生産する際に用大阪府立大学大学院 工学研究科化学工学科 (2018年度 一般研究開発助成 AF-2018018-B2) 教授 齊藤 丈靖 図1に流量比r = 5.0における全圧と成膜速度の関係を示す。全圧が上がると製膜速度が向上していることがわかる。全圧増加による原料分圧の上昇が要因だと考えられる。また、供給されたTi源がTiCNとして基板および電極上に全てに析出した場合の成膜速度は4.42×104 nm/hであるが、実測値は~103 nm/hであり、TDMATの反応率の小ささやH2プラズマによるエッチングなどが原因であると考えられる。 図図11 流流量量比比r = 5.0ににおおけけるる全全圧圧とと成成膜膜速速度度 図2に全圧1.5 Torrにおける各流量比rで成膜した試料のXRDの結果を示す。r = 2.5においてTi (101)の結晶ピークが観測されたが、TiCやTiNなどのTi系化合物由来の回折線は見られなかった。 − 114 − 有機チタン原料を用いた直流パルス放電プラズマCVDに よるTiBCN硬質膜の微結晶構造制御
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