助成研究成果報告書Vol33
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3・5 造形テスト前の重大なアクシデント 大体積積層実験では,積層量が当初の想定より大きすぎてノズルのギャップを見直したが,これを修正したノズルを設計し,2層目以降を積層する造形テストを開始した時に重大なアクシデントが発生した. 積層実験中にレーザが発振しなくなるトラブルが起きたため,加工ができなくなった.そのため,本研究を推進するために故障の原因を直ちに調査し,修理して復旧できるようであれば,復旧を試みた.その結果,YAGレーザを励起するためのLDが複数,経年劣化によって損傷し,そのため発振器内のYAGロッドを焼損したための停止であることが判明した.このように発振器の心臓部に重大な故障があり,修理が事実上不能であったため,レーザの復旧を断念した. そこで,本研究で未だ実施できていない造形実験を行い,研究を継続するために,故障したレーザの代替となるレーザを研究所内で探索した.その結果,別件で導入中のレーザ加工機(最大出力が連続波で2kWのディスクレーザの集光系を産業用ロボットがハンドルするもの)があったので,関係者に相談して,これをホットワイヤ造形ができるように改造して実験を継続することにした. このレーザ加工機の制御は,産業用ロボットのプログラムでレーザのON/OFFやガスの制御なども行うタイプだったので,ホットワイヤの供給/停止もこのシステム通じて行う形へ改造した.加工ノズルについても,ここまでのノウハウを反映したノズルをレーザ加工機の集光系に合わせたものに再設計して装着した. このようなレーザ加工機の改装と並行して,ロボットのティーチングや制御のためにロボットの操作習熟についても造形実験に先行して実施した. 図図99に造形実験のために改装したレーザと加工ロボットの写真を示す.本機の主要部分は工業製品ベースであるため,形状をなぞる精度や各種機器のON/OFFの制御性能は,基礎実験をしていた自作ベースの機械よりも大幅に向上している.したがって,本機では,形状を伴う造形を中心に実験することにした. 図図99 造形実験用ホットワイヤ装置の駆動部と発振器 イヤを視認しやすい. このように,ホットワイヤ時の溶融池の挙動は,ワイヤに電流を流さない場合の挙動と同じであり,安定した挙動が続いていることが確認された. 3・4 ホットワイヤによる大体積積層の試行 3.1~3.3節の結果より,ホットワイヤ式のワイヤ造形は,加工点のワイヤ温度を1000℃近くに上げることができること,ワイヤに電流を流さない場合に比べて供給できるワイヤ速度が2倍以上に上げることが可能なこと,ワイヤの溶融~積層の挙動はワイヤに電流を流さない場合と同様であることが明らかになった.これらの結果から,ホットワイヤにする効果は,純粋にワイヤの温度を上げ,レーザがワイヤを溶融するために与えるエネルギーの量を抑制する方向にのみ働いていることが確認された. そこで,本節では,ホットワイヤ状態でワイヤの供給速度を大きくして,高い造形速度を達成できるかを研究した. 提案時の目標として,「造形速度は7kg/hour以上を目指す」と定めていたので,この目標値を超えるような高速大体積積層ができるかを実験した. 高速大体積積層を行うためにレーザの出力を3kWに上げ,ホットワイヤの電流が120Aでワイヤの供給測速度も14m/minまで上昇させて第1層目の積層を試みた結果を図図77に示す.太い細いはあるものの,6mm幅,5mm高,74mm長の1層目を約3秒で作成できた.このビードを含む試験片の全体の重さを測定し,試験片の長さ×幅×厚さ×密度で算出した基板の重さを引き算することで求めた造形部分の重さは6.801gであった.したがって,造形部の重さと造形時間から単位時間当たりの造形速度を計算すると,8161.2g/h(8.1612kg/h)であることが確認された.この値は当初目標にしていた7kg/hを十分超える速度であり,目標を達成したと言える. 図図77 高速大体積積層検討の第1層ビード外観 なお,ワイヤ造形用ノズルと試験片の隙間は当初は5mmを確保していたが,図7のような大体積積層の実験では条件によってはノズル底面が積層の頂上と干渉し,積層を押しつぶす場合もあった.図図88にその一例を示すが,大体積造形にも対応させるためにノズルを改造し,試験片の隙間を10mmに拡大した. 図図88 高速大体積積層時のノズル接触ビード外観例 − 88 −

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