助成研究成果報告書Vol33
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図9 PDMSサポートを利用した新たな転写手法. 固いPETレシーバー上へ高品位な転写堆積を実現. ティング」技術の開発を目指している.そこでヒト象牙質基材へのFn担持アパタイト膜のレーザー転写を図9左に示す実験配置で実施した.図3実験との違いは,象牙質レシーバーに高品位転写堆積を実現するため,アパタイト原料膜を支持する透明サポート側に衝撃吸収性と柔軟性を有するPDMSを利用した点である.このFn-apatite/PDMSサポートからなるドナーを用い,PDMSに比べハードな表面をもつPETレシーバーへの転写堆積を検討した結果を,図9右下に示す.図9右上のFn-apatite/PETドナーを用いた場合は転写膜の破砕が顕著にみられたのに対し,今回のPDMSサポートを用いた場合は,破砕の伴わないレーザービーム形状を反映した転写が可能なことを実証できた. そこで,上記のPDMSサポートを用い,ヒト象牙質へのFnタンパク質担持アパタイトのレーザー転写を検討した結果,Fn-apatiteマイクロチップの高品位転写堆積に成功した(図10上段左).さらに,転写したFn-apatiteと象牙質の界面を観察するため,FIB加工により試料を薄片化(図10上段中央・右),断面SEM観察を実施した結果を図10下段に示す.Fn-apatite膜と象牙質界面に大きな隙間のない高品位界面の形成を初めて基礎実証できた.ただし図10 象牙質に転写堆積したFn担持アパタイト(上段左)とFIBによる断面試料形成(上段中央・右),Fn担持アパタイト/象牙質界面の断面SEM観察(下段). 課題もあり,アパタイト膜の表面は図4(a,b)に示すようにフレーク状のモルフォロジーを有し平滑でないため,界面には小さなギャップが存在している.そこで今後は,転写原料膜の表面モルフォロジー制御など界面にフォーカスした技術開発を進め,コーティングに重要な界面の評価と高次制御を実現したいと考えている. 4.結言 本研究では,レーザー転写法を基盤技術に,生理活性タンパク質担持アパタイトの高速・高密着コーティング手法を提案,基礎実証に挑戦した. 細胞接着性タンパク質であるフィブロネクチン(Fn)を添加したアパタイト膜を原料ドナーとし,レーザー転写用犠牲層と衝撃吸収性レシーバー基材を用いることで,脆性材料であるアパタイト膜においても膜形状を維持した良好な膜転写を実現できた.Fn担持効果として,高細胞接着性,さらに膜のモルフォロジー変化とクラック発生を低減した高品位転写が確認できた.細胞接着性タンパク質の添加が,生理活性向上にとどまらずレーザー転写挙動にも影響し,レーザー転写用原料として優れた特性を有することがわかった. ヒト象牙質への本技術の適用を目指し,衝撃吸収性サポートを開発した結果,象牙質へのFn担持アパタイトの転写堆積と高品位界面の形成に成功した. 今後,細胞接着などに加え細胞の局在化や伸展方向など自在な細胞制御が可能なレーザー生理活性コーティング技術を展開したい. 本研究の実施にあたり公益財団法人天田財団より重点研究開発助成B(AF-2017202)を賜りました.ここに深甚なる謝意を表します. 1) A. Narazaki, T. Sato, R. Kurosaki, Y. Kawaguchi, and H. Niino, Appl. Phys. Express 1, 057001 (2008). 2) A. Narazaki, R. Kurosaki, T. Sato, and H. Niino, Appl. Phys. Express 6, 092601 (2013). 3) 奈良崎愛子, オプトロニクス 433, 127-131 (2018). 4) M. L. Levene, R. D. Scott, and B. W. Siryj, Appl. Opt. 9, 2260–2265 (1970). J. Bohandy, B. F. Kim, and F. J. Adrian, J. Appl. Phys. 60, 1538-1539 (1986). 5) 6) C. W. Visser, R. Pohl, C. Sun, G. R. B. E. Römer, B. Huis in't Veld, and D. Lohse, Adv. Mater. 27, 4087-4092 (2015). 7) M. Zenou, A. Sa’ar, and Z. Kotler, Appl. Phys. Lett. 106, 181905 (2015). 8) A. Piqué, R. C Y Auyeung, H. Kim, N. A. Charipar, and S. A. Mathews, J. Phys. D: Appl. Phys. 49, 223001 (2016). 謝 辞 参考文献 − 84 −

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