助成研究成果報告書Vol33
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図7 転写構造のFn添加およびパルスエネルギー依存性. 図8 (a)Fn担持と(b)非担持アパタイトチップ(直径約 100 µm)を2次元配列したPDMS上のCHO-K1細胞 (濃い紫色,10~数十µm)の光学顕微鏡イメージ. 3・3 レーザー転写:Fn添加効果 次に,Fn担持/非担持膜を原料に用いたレーザー転写を比較検討,Fn添加が転写挙動に与える影響を考察した. 図7にPDMSレシーバー上に転写堆積したFn担持/非担持アパタイトマイクロチップのパルスエネルギー依存性を示す[14].Fn担持試料では,転写閾値は約70-90 μJ/pulseにある.90-130 μJ/pulseのパルスエネルギー範囲では,膜破砕の無い緻密な状態を維持した転写が実現でき転写に好適な条件と言える.尚ここには示さないが,より高エネルギー領域では,クラック発生が頻発化し,膜破砕が生じ始めることを確認している.よって,高品位膜転写の最適エネルギー範囲は,転写閾値エネルギー近傍に存在する.一方,Fn非担持のアパタイト原料膜の場合は,70 µJ/pulseにおいて部分的ではあるが転写物が確認され,転写閾値がFn担持膜に比べ低エネルギーにシフトした.一般的にレーザー膜転写では,膜を支持する透明サポート(本実験の場合は犠牲層)からの剥離エネルギー(密着性に依存),ビームパターンを型抜きするための膜内結合切断エネルギー(膜の密度,結合エネルギーに依存),レシーバーに移すエネルギー(放出部の重量,即ち膜厚に依存)が必要となる.本実験でのFn添加の結果,転写閾値が高エネルギーにシフトしており,Fn添加による膜の緻密化や下地層(犠牲層)への高密着化が起こっている可能性が示唆される.転写チップの表面観察から,Fn非担持の場合は転写によるクラック発生が多数確認され,タンパク質の添加によりクラック発生が抑制されている.以上より,細胞接着性タンパク質添加が,クラックレスな高品位膜転写に対しても有効な手法であることが分かった.タンパク質は細胞接着性向上を含め様々な生理活性機能の付与を可能にするため,タンパク質担持材料の転写は,インプラントなど医用材料表面の高機能化や医療応用が期待される. 3・4 転写したFn担持アパタイトの生理活性評価 図8に,(a)Fn担持アパタイト(Fn-apatite)ならびに(b)非担持アパタイト(apatite)マイクロチップを転写形成したPDMS上で24時間培養されたCHO-K1細胞の光学顕微鏡イメージを示す.直径約100 μmの円形ディスクの淡い紫色のパターンは,転写により形成されたマイクロチップに相当する.これら両方のマイクロチップ上に細胞が選択的に密集する様子が確認された一方で,PDMS上の細胞はまばらであった.この結果は,本手法プロセスで形成されたアパタイトおよびFn担持アパタイトマイクロチップが,PDMSに比べて,CHO-K1細胞に対して優れた細胞適合性を示す.さらに,Fn-apatiteマイクロチップ上の細胞の多くが,Fn担持アパタイト原料膜(図4(d))と同様に, 進展している様子が確認できる(図8(a)).このことから,Fnの細胞接着性が,レーザー転写後も保持されていると推察される.これらに加え,細胞の多くがアパタイトチップの周囲に沿って局在・整列する傾向がみられることから,本手法によるパターニングが細胞操作能力を有する可能性が示唆される.即ち,本手法によると,細胞接着などに加え細胞の局在化や伸展方向など多様な制御が可能な生理活性コーティングを実現できる[18]. 3・5 ヒト象牙質への転写 本研究では,レーザー転写をベースとした生理活性タンパク質材料のコーティング,即ち「レーザー生理活性コー− 83 −

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