図4(a)アパタイト,(b)Fn担持アパタイト原料膜のSEMイメージ.CHO-K1細胞培養後,クリスタルバイオレットで固定染色した(c) アパタイト,(d)Fn担持アパタイト膜の光学顕微鏡イメージ(濃い紫色が細胞).Fnタンパク質担持膜上では伸展する細胞が多数みられる.図6アパタイトコーティングの共焦点レーザー顕微鏡像.図5膜転写におけるレシーバー基材の効果.図6にPDMS上に形成したアパタイトの連続パターン転写によるコーティングの様子を示す.基材表面約80%の被覆率での連続転写堆積を実現している[19-21].3・2レーザー転写コーティング:レシーバー物性の影響レーザー転写では,転写物とレシーバーの衝突を伴うため,脆性材料では破砕し易い.そこで,衝撃を吸収・緩和する衝撃吸収材をレシーバーとして使用すれば,膜破砕を低減できると仮定,以下の検討を行った.一般に,ポリマー材料は変形時に弾性と粘度を示す.正弦波応力により計測される複素弾性率は,貯蔵弾性率E 'と損失弾性率E "に分解される[15].前者は弾性成分で変形中のエネルギー貯蔵に直接比例するのに対し,後者は粘性成分であり外部拡散するエネルギー損失に相当する.損失正接(tanδ= E "/ E')は損失エネルギーと保存されたエネルギーの比であり,tanδの値が大きいほど,より多くのエネルギーが拡散(衝撃吸収)する.一般的なPETのtanδの値は約10-2(1 Hzの測定周波数,室温)であるのに対し,PDMSの値はPETのそれより約1桁大きく,PDMSの方が衝撃吸収能が高いことを示している[16].この仮説を検証するため,PDMS(ソフト表面)とPET(ハード表面)の2つの異なるレシーバーを用い,アパタイト膜のレーザー転写を検討した.図5は,(a)PDMSおよび(b)PETレシーバーに転写堆積したアパタイトマイクロチップの共焦点レーザー顕微鏡イメージを示す.PDMSレシーバー上のアパタイトマイクロチップは,レーザースポットに対応した円形の膜形状を維持しており,比較的高品位な転写が得られている.一方,PETレシーバーでは,顕著な膜破砕が観察された.レーザー転写時に発生する衝撃力のモデルを図5(c)に示す.衝撃吸収性の高いPDMSの場合,衝撃は効果的に吸収されるため,転写膜の破砕を軽減できる.対照的に,PETレシーバーの場合,衝撃は表面近くに保存されるため,膜破砕が容易に起こる.さらに,柔軟性にも優れるPDMSは,ドナー膜とギャップなく接触しやすく,フライト距離を低減できるため,フライト時の応力付加を低減できる効果もある.以上より,PDMSレシーバーの利用により,アパタイトのような脆性材料も転写可能であることを基礎実証できた[14,17-18].担持試料が約200 nmであった.以上の結果から,細胞接着性タンパク質であるフィブロネクチン添加による膜の緻密化が示唆される.次に,原料膜の生理活性効果を調べるため,原料膜表面へのCHO-K1細胞播種による細胞接着性評価を行った.細胞播種後3時間を経てクリスタルバイオレットで細胞の固定化, 染色した光学顕微鏡イメージを図4(c,d)に示す.図4(c)がアパタイト,(d)がFn担持アパタイト原料膜上の染色細胞のイメージである.図4(c)のイメージから,Fn添加の無いアパタイト膜上では,ほとんどの細胞は球形状のままであり,細胞伸展は見られない.一方,図4(d)にあるようにFn担持アパタイト膜上では,多数の細胞伸展が見られ,本原料膜の優れた細胞接着特性を示している.以上よりFn添加効果として,原料膜の緻密化などモルフォロジー変化ならびに細胞接着性向上が確認された[14].− 82 −
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