助成研究成果報告書Vol33
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図3 レーザー転写システムの構成例. 図2 バイオミメティック法を用いたFn担持/非担持アパタイト成膜によるレーザー転写用原料膜の調製. 図3 に本実験で用いたアパタイトのレーザー転写装置例を示す.レーザー光源に波長1064 nmのDPSSナノ秒パルスレーザー(fwhm 40 ns, 10 kHz)を用い,凍結乾燥処理したFn担持/非担持アパタイト膜を転写原料膜(ドナー)とし,透明サポートであるPET側からレーザーパルスを照射,アパタイト膜をレシーバー基材へ転写した.アパタイ 2・3 細胞活性評価 理することで,カーボン犠牲層表面にアパタイトの前駆体であるアモルファスリン酸カルシウム(ACP)ナノ粒子をプリコートした.次に,アパタイトに対して過飽和なリン酸カルシウム水溶液(コーティング液)に5時間浸漬した.このコーティング液への浸漬により,基材表面のACPがアパタイトの核形成を誘起し,過飽和溶液中のイオンやリン酸カルシウムクラスターが膜成長するバイオミメティック手法を利用し,アパタイト原料膜を調製した.さらに前記の交互浸漬処理のためのカルシウム溶液とリン酸溶液ならびにリン酸カルシウム過飽和溶液にFnを添加することで,膜中にFnを担持させたアパタイト膜(Fn担持アパタイト,Fn-apatite)を調製した.成膜後,Fnの失活抑制のため凍結乾燥処理を行った.同条件での比較検討のため,Fn担持/非担持に関わらず凍結乾燥処理を実施した. 得られた原料膜については,薄膜X線回折測定より析出相を分析,共焦点レーザー顕微鏡およびSEM観察より表面モルフォロジーと膜厚を評価した. 2・2 細胞接着性フィブロネクチン(Fn)担持/非担持アパタイト膜のレーザー転写 トが脆性材料であり,転写時に膜にかかる衝撃を低減するため,ドナー膜とレシーバー基材を接触配置させた状態でレーザーパルス照射を実施した.また,衝撃吸収性の異なるPET,ポリジメチルシロキサン(PDMS)の2種類のレシーバーについて検討した.レーザーパルスはガルバノミラー/fθレンズを用いて,各スポットに単一ショット照射となるようビーム集光(ガウシアンビーム)走査し,転写物の2次元パターニングについても検討を行った. レーザー転写プロセスがタンパク質の生理活性に与える影響を検討するため,以下の要領の細胞培養試験により,レーザー照射前のFn非担持/担持アパタイト原料膜ならびにそれらのレーザー転写構造物について,細胞接着性を評価した.24ウェル細胞培養プレートを用い,各サンプルにCHO-K1細胞を播種した(5×104細胞/0.5 mL/ウェル). 3から24時間培養後,クリスタルバイオレットによりサンプル上の細胞を固定化・染色し,光学顕微鏡観察を実施した. 2・4 Fn担持アパタイト膜のヒト象牙質への転写 本手法の歯面への適用を基礎実証する目的で,Fn担持アパタイト膜のヒト象牙質基材(インフォームドコンセント後,提供された抜去歯牙より作製)への転写を実施した.象牙質は,硬組織の無機成分であるアパタイトが70%と残りはコラーゲンなどの軟組織で構成され,外部から歯の中心の歯髄まで無数の象牙細管が走っている.歯周病や加齢などにより歯茎が下がりセメント質が薄れるなどすると,この象牙細管が露出する.この象牙質への転写を検討するため,透明サポートをPETから衝撃吸収性の高いPDMSに変更,さらにカーボン犠牲層を蒸着後,Fnアパタイト膜を成膜した. 転写したFnアパタイト膜と象牙質の界面を観察するため,集束イオンビーム(Focused Ion Beam, FIB)加工により膜断面を形成,そのSEM観察を行った. 3.研究成果 3・1 アパタイト転写原料膜へのFn添加効果:モルフォロジー変化と細胞接着性の向上 図4 にバイオミメティック法で作製した(a)アパタイト転写原料膜と,成膜時のFn添加により調製した(b)Fn担持アパタイト膜の表面SEM写真を示す.両試料ともフレーク状の表面構造が共通して見られるが,Fn添加によりその構造サイズが微細化することが分かった.また過飽和溶液への浸漬時間は両試料ともに5時間であるが,得られた平均膜厚はFn非担持のアパタイト膜試料が約500 nm,Fn− 81 −

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