図2 複合超短パルスレーザ3次元微細加工により作製した微小擬似生体バイオチップ 3.研究成果 3・1 複合超短パルスレーザ3次元微細加工による微小Channel width: 900 nm~ 2 mIn channelることができる。作製したマイクロ流体構造にネガ型フォトレジストを充填し(図1(d))、同じ超短パルスレーザを用いて流体構造内部で多光子造形を行う(図1(e))。それにより図1(f)に示すように、3次元ガラス流体構造内部に3次元ポリマーマイクロ•ナノ構造を内包した高機能バイオチップを作製することができる。本技術は、ガラス流体構造内部に後から3次元ポリマー構造体を集積化するため、ボトルシップ集積加工技術とも呼ばれる5)。 多光子造形の一般的な加工解像度(最小voxel寸法)は100nm程度である。一方ボトルシップ集積加工技術では、レーザ光は空気/ガラス/レジストの3つの異なる屈折率媒体中を伝搬するため、各界面で球面収差が生じ、解像度が低下する。実際、ボトルシップ集積の加工解像度は500 nm程度であり、ガラスマイクロ流体構造内部に、さらに細いチャネル構造をポリマーで形成しようとした場合、そのチャネル幅は最小で2μmが限界である。そこで本研究では、ガラス流体構造内部で行う多光子造形の加工解像度を改善するため、空間位相変調器(SLM)を用いてレーザ光の波面の制御を行った。 一方、微小擬似生体バイオチップの高機能化を図るため、タンパク質の3次元多光子造形技術を開発し、さらにタンパク質3次元微細構造のボトルシップ集積加工を試みた。タンパク質の3次元造形では、タンパク質分子と光重合開始剤を混合した前駆体質溶液中で超短パルスレーザ3次元直描を行う。前駆体溶液を充填したガラス流体構造内部に超短パルスレーザ光を集光し、ガラスチップを保持したx-y-zステージをPC制御により3次元走査することで、タンパク質のボトルシップ集積加工を行った。 擬似生体バイオチップの作製 図2に示すように、まずT字型のガラスマイクロ流体構造を図1(a)-(c)に示した超短パルスレーザ3次元ガラス加工技術により作製した。続いて直交する2つのチャネルの結合部の手前に、図1(e)-(g)に示した多光子造形を用いた超短パルスレーザボトルシップ型集積技術により、パンパイプ型のポリマーナノチャネルアレイを配置した。前述にように、通常のボトルシップ集積加工の加工解像度は500 nm程度であり、ガラスマイクロ流体構造内部に、さらに細いチャネル構造をポリマーで形成しようとした場合、そのチャネル幅は最小で2μmが限界である。ここではSLMによりレーザ光の波面の制御を行うことにより、加工解像度を約100 nmに改善した。その結果、ガラス流体チャネル中に集積化されたポリマーナノチャネルアレイのチャネル幅として900 nmを実現した6)。 3・2 タンパク質の多光子造形とボトルシップ集積 多光子造形では、前駆体としてネガ型フォトレジストが主として用いられ、付加加工によりポリマーの3次元マイクロ・ナノ構造体が構築される。我々は、本手法をタンパク質の3次元造形に拡張することを試みた。前駆体としてネガ型フォトレジストの代わりに、タンパク質分子(ウシ血清アルブミン:Bovine serum albumin (BSA))に、光重合開始剤(Sodium 4-[2-(4-Morpholino) benzoyl-2-dimethyl-amino] butylbenzenesulfonate: MBS)を混合した溶液を用いた。図3に、ガラス基板上に造形したBSAの3次元マイクロ構造を示す。本手法のメカニズムは以下のように考察される。(1) 前駆体溶液中の光重合開始剤分子が超短パルスレーザ多光子吸収により励起される。(2) 励起された光重合開始剤分子がタンパク質分子をさらに励起する。(3) 励起されたタンパク質分子同士が重合し、固体のタンパク質3次元構造が形成される。さらに本手法とボトルシップ集積加工技術を組み合わせることにより、タンパク質本来の性質を利用して、より生体に近い環境をガラスマイクロ流体素子中に創成することを試みた。実験では、ガラスマイクロ流体素子に、タンパク質と光重合開始剤を混合した前駆体溶液を充填し、フェムト秒レーザーの3次元直描を行った。その結果、図4に示すように、ガラ図3 多光子造形法によりガラス基板上に作製されたBSAの3次元マイクロ構造 − 76 −
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