図6 工作物振動の有無による加工進展の違い 大きく振動し,その振幅はそれぞれ約185μm,49μmであり,振動数は両者とも約121Hzである. 図6は,アルミニウム合金に直線穴加工を行った時の工作物振動の有無による加工進展の違いを示す.振動なしの場合,加工機ヘッドが頻繁に上昇を繰り返し加工が安定していない様子が伺える.これは電極球が加工穴内面と加工粉を介して接触し,放電が発生しない状態となり加工機が極間距離を広くする制御を行っているためである.そして加工深さ約16mmでアークして加工が停止した.これに対し,振動ありの場合,加工機ヘッドの上昇はなく,安定した加工が継続的に行えている.そして,振動なしの場合に比べ2倍程度の加工速度が得られる.振動付与により加工粉などの排出が促進されただけでなく8),9),電極球と加工穴内面の長時間の接触を防ぐことができたためと考える. 合金工具鋼に対しても同様に工作物振動付与により安定した穴加工が可能となった.しかしながら,本加工法では加工粉を排出するための電極ジャンプ動作を使用することが出来ないため,より深穴になると加工が停止する可能性が大いにある.もし,加工穴途中からの加工再開が工作物振動付与によって可能となれば実用上非常に有効であると考えられる.そこで,工作物振動付与によってギャップを生じさせることで加工再開を試みた. 図7に示す赤線は,工作物振動を行いながらアルミニウム合金に対して,工作物表面から通常加工を行った場合の加工推移を示す.そして,深さ5 mmの加工後にその加工穴底と電極球を接触させて加工再開した場合を青線で示す.工作物振動なしでは多少ギャップを開けても加工は再開できない.これに対し,工作物振動を付与した場合,加工再開が可能であり,かつ通常加工と同じ速度で加工できている.従って,工作物加振により容易に加工再開でき,安定した加工が継続できることが判明した.前述のように本加工法では,電極のジャンプ動作を行えないために加工深さが深くなると加工粉の排出が困難だが,たとえ加工が途中で停止した場合でも本手法を用いれば加工紛を排出した後に加工をそこから再開できるため,より深い曲がり穴加工が可能となる. 5.工作物振動下での放電加工特性 放電電流値,および極間距離を制御するサーボ基準電圧を変化させ,非固定つり下げ電極を用いた工作物振動による穴加工の可否や,加工速度と加工穴径の変化について検討した8).図8は,工作物をSKD11とし,振幅134ミクロンでの工作物振動の下での放電穴加工が可能であった加工条件を示す.図より電流値が大きいほど,またサーボ基準電圧が高いほど加工可能条件が拡大することが分かる.これは,放電電流値が高いほど電極と加工面との距離であるクリアランスが広くなること,またサーボ基準電圧が大きいほど加工中の極間距離が広がることによるものと言える.本加工法では加工中に電極が放電衝撃によって揺れ動くため,ある程度のクリアランスを設けたほうが短絡を防止でき安定した加工状態での加工が可能になるものと考えられる. また,図9には,工作物振動の下で電流値およびサーボ電圧を変化させた場合の加工速度Vw,および加工穴直径dの変化を示す.一般の固定電極を用いた放電加工と同様に,電流値が大きいほど加工速度および加工穴径が増加することが分かる.一方,サーボ電圧を変化させた場合,サーボ電圧が大きいほど加工速度が低下することは一般の放電加工特性と同様であるが,加工穴径は一般的加工特性と異なりサーボ電圧が大きいほど小さくなっている.これはサーボ基準電圧が小さいと放電開始距離が小さくなることによって同じ放電パルス条件であっても非固定電極に図7 工作物振動付与による加工再開 図8 放電加工可能条件 − 67 −
元のページ ../index.html#69