1. 研究の目的と背景 では穴入口から加工点までが湾曲し,その形状に合わせ工具が柔軟に変形することが必要であるが,工具に作用する加工力が小さければそれが可能となる.このような観点からこれまで放電加工や電解加工を利用した曲がり穴加工法が提案されている. 石田ら1)はワイヤとコイルバネから構成される屈曲電極支持構造を提案し2),それを用いた曲がり穴加工を報告している.また,深穴加工のために加工穴内部を走行する電極送り機構を提案している.竹内ら3)はある曲率半径をもった形状記憶合金をガイドから押し出すことによって設定した曲がり穴を加工する方法を検討している.さらに,内山ら4)はフレキシブルチューブで支持された電極球を用いて,電解加工による曲がり穴を実現している.しかしながら,これらの方法では,構造が複雑なために,加工できる穴径が10mm以上と大きく,曲がり穴の曲率半径が大きい,加工穴径が深さ方向で不均一など,複雑な曲がり穴を精度よく加工することは困難である. そこで,我々は極めて簡便な方法で小径曲がり穴を実現することを目的とし,図2に示すような柔軟に変形する箔でつり下げられた非固定の直径数mmの電極球を用いて放電加工を行い,加工中に工作物を任意の角度に傾けることで加工方向を制御し,高精度の小径曲がり穴を得る全く新しい加工法を提案している5),6).近年の放電加工における加工技術や極間コントロールの高応答化の進展は目覚ましく,それを駆使し様々な従来にない加工形状を実現できる可能性がある.同時に設計の自由度も格段に高くなり,従来にない高機能の機械要素を実現できると期待される. 本研究では非固定電極を用いた曲がり穴加工技術の性キーワード:放電加工,曲がり穴,金型 射出成形金型等において,金型冷却時間の短縮は成形サイクルを短縮し,結果的に生産性向上をもたらす.そのために金型内に設けられる冷却穴は,流体や熱の効率的移動の観点から考慮すると,流動抵抗を低減でき,かつ金型表面温度の均一な分布を可能にする,金型の成型品形状に沿った曲がり穴が理想的である.金型のみならず,様々な放熱・冷却部品に対してこれが実現すれば,省エネルギー持続可能社会にも貢献できるブレークスルーとなり得る.しかしながら,従来の機械的除去技術では金属塊材に対しての小径曲がり穴の高精度加工は困難である.従って,図1に示すように,従来はドリル加工による直線穴を組み合わせて冷却穴を構成し,不要な部分を塞いで冷却流路を作成している. 近年,その技術発展が目覚しいアディティブマニュファクチャリングにおいては,金属粉末をレーザや電子ビームを用いて焼結させる粉末床溶融結合法が実用化されており,ヨーロッパでは,ニッケル基合金製のジェットエンジンのタービンブレードやチタン合金製人工関節コンポーネントに応用されている.エンドミルによる切削加工と組み合わせて金型を作成する複合加工法も提案され,わが国の工作機械メーカーでも切りくず低減による材料節約を主目的とし,普及しつつある.しかしながら,塊材からの削り出しと比較すると金型強度が完全ではなく,サポート無しで造形できる穴径には制限がある.また,冷却穴内面の表面性状や脱落粉末の冷却液への混入などの課題も残っている.さらにその造形加工時間は長時間に及ぶ. 一方,放電加工や電解加工等では,従来の切削や研削などの機械加工と異なり,工具(電極)と工作物は非接触で工具に作用する加工力は極めて小さいため,原理的には工具を強固に固定しなくても加工可能である.曲がり穴加工図1 コア金型理想冷却流路形状と従来加工 岡山大学 大学院自然科学研究科 (平成29年度 重点研究開発助成B AF-2017002) 教授 岡田 晃 図2 非固定のつり下げ電極 − 65 −金型冷却液曲がり穴流路の革新的加工法の開発 非固定電極を用いた放電加工による
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